中小企業の競争力向上には「女性活躍」が欠かせない

パク・スックチャ 株式会社アパショナータ 代表取締役

パク・スックチャ
株式会社アパショナータ 代表取締役

日本生まれ、韓国籍。
米国ペンシルバニア大学経済学部BA(学士)、シカゴ大学MBA(経営学修士)取得。
米国系運輸企業に入社。同社にて太平洋地区での人事および人材開発に従事する。その後、ワークライフバランスとダイバーシティを推進するコンサルタントとして独立。米国とアジアに精通したグローバルな経験を活かし、グローバル化と複雑化する多様性への適切な対応に向け、ダイバーシティ&インクルージョンへの風土改革及び教育研修に携わる。
企業にメリットをもたらす手法で進める在宅勤務(テレワーク)導入コンサルティングで成功実績を出し、企業での在宅勤務も専門とする。
近年ではアンコンシャス・バイアス及びジェンダーバイアスに関する組織での意識と行動変革にも力を注ぐ。


著書:
『アンコンシャス・バイアス—無意識の偏見— とは何か』(ICE新書)
『アジアで稼ぐ「アジア人材」になれ!』(朝日新聞出版)
『会社人間が会社をつぶす-ワーク・ライフ・バランスの提案』(朝日選書)


毎年発表される「ジェンダー・ギャップ指数」。2023年発表の調査では、日本は世界125位と、過去最低の順位を記録してしまいました。SDGsは人権を非常に重視した目標となっていますから、女性活躍度合いが低いことが問題になるのはいうまでもありません。ダイバーシティなどに詳しい、アパショナータ代表のパク・スックチャ氏に話を伺いました。

世界に後れをとっている日本

世界経済フォーラムが今年発表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は125位でしたが、昨年は116位。順位自体が低いのも問題ですが、昨年よりさらに順位を落としており、残念です。この調査は4つの分野で評価しています。日本は「教育」と「医療」は悪くないのですが、「政治」と「経済」が足を引っ張っています。

日本のジェンダーギャップ指数順位は125位

※世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート 2023」より、上位5か国に加えG7加盟国、東アジア近隣国を抜粋し、りそな銀行が作成

バブルの頃までの日本では、女性は結婚したら会社を辞めるのが当たり前とか、難関大学を出ている女性が敬遠されて採用されない、などという、今では考えられない状況でした。そうした時代を思うと今は隔世の感がありますし、みなさんも「だいぶ平等になってきた」と感じているのではないでしょうか? しかし、上記のような結果になっているのはなぜかというと、世界の進歩スピードが非常に速いからなのです。

たとえば韓国は過去、日本より低い順位だったのですが、今では日本を追い抜いていきました。日本は今の改善スピードに満足していてはいけないのです。

影響はSDGsや人権問題にとどまらない

男女の不平等は人権の観点から見て問題であるというのは、当然のことです。今、世界中で多くの企業が取り組んでいるSDGsも人権を重視した目標ですから、女性活躍は必須です。

しかし、問題は人権にとどまりません。今や日本女性も大学や大学院に積極的に進学する時代。男性と遜色ない高い教育を受けているにもかかわらず、女性が活躍できていないということは、国際競争力の低下に影響するのです。実際、ジェンダー・ギャップ指数で上位の国々は、国際競争力ランキングでも上位になる傾向があります。

企業においても、近年は人手不足が叫ばれていますが、高学歴で能力が高いのに、活躍の機会を与えられていない女性はたくさんいます。女性をうまく活用できていない企業は、人権の観点でまずいだけでなく、自社のパフォーマンスを低下させているという点でも非常にもったいないことなのです。「女性はすぐ辞める」とおっしゃる経営者もいるかもしれませんが、男性を主眼に置いた就業規則や職場環境づくりに終始すれば、女性の離職率が高くなるのは当たり前。優秀な女性たちに働いてもらいたいならば、女性が働きやすい職場環境を整備すべきです。

中小企業ならではの取り組みやすさも

人材と資金が豊富な大企業は、育児休暇などの制度が充実しています。その点、中小企業は比較されると辛いという声もありますが、一方で中小ならではの利点もあります。それは、トップダウンで、細かな要望に応える体制作りを進められる点です。

要は社長が「やる」と決断すれば良い話で、大企業ならやりにくい個別対応も柔軟にできます。スピーディーに、かゆいところに手の届く施策を打てるのは、中小企業ならではだと思います。

何をしたら良いか分からなければ、ぜひ女性社員に聞いてみてください。女性たちでチームを組んで、女性活躍のプロジェクトを社内で立ち上げることもできます。国や自治体が行っている、女性活躍に関する賞を受賞するくらいに真剣に取り組めば、会社の知名度も上がり、採用にも良い影響がでます。離職率も下がりますから、一石二鳥です。

もちろん、男女の間には明確な「違い」が存在します。体格や力などはその一例です。しかし、諦めてはいけません。ある工場では女性でも扱いやすいように工具を軽くしたり、荷台にキャスターをつけて動かしやすくすることで、体格の違いを克服。今では女性はもちろん、高齢男性も働きやすい職場となりました。

人手不足が深刻な今こそ、女性活躍を真剣に考え、スピードを上げて取り組んでいっていただければと思っています。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年1月26日時点の内容となります。
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