年金制度の一翼を担う存在として、広く知られるようになった確定拠出年金制度。スタートして20年余りで企業型確定拠出年金(企業型DC)の実施事業主は4万社を超え、加入者は782万人に達しています(2022年3月末現在)(※)。この制度は導入して終わりではありません。加入者となる従業員が制度を正しく理解した上で確実に運用し、安定的に資産形成が図れるようになることが目的です。
今回は制度の趣旨について理解を促し、効果的な運用を導く投資教育の内容や実施手順について解説します。
投資教育とは
投資教育とは企業型DCに加入する従業員に対し、制度の仕組みや資産運用の基礎知識を提供するもので、制度導入時に行う「導入時投資教育」と制度導入後に繰り返し行う「継続投資教育」があります。継続投資教育は従来「配慮義務」でしたが2018年施行の改正確定拠出年金法で、より実施を求められる「努力義務」に変更となりました。
企業型DCは従業員がどの金融商品で運用するかにより、将来受け取る金額に違いが生まれます。投資に関する知識を自ら学び、すでに投資を経験している従業員であれば積極的に運用できる一方、定期預金等の元本確保型商品のみを選択し、運用されていないケースもあり得ます。導入した以上、企業は投資に必要な知識をすべての従業員に対して均等に提供する必要があるのです。
また、投資教育は従業員の金融リテラシーやエンゲージメント向上が期待できるとされ、結果として従業員のスキルアップや定着率にもプラスになると考えられています。
導入教育では基礎を分かりやすく
導入時投資教育では従業員に制度の概要を理解してもらうことが最も重要です。同時に資産運用が退職後の人生設計にも関わってくる意識を喚起させる必要もあるでしょう。具体的には、
- 制度の概要や仕組み
- 運用や資産配分の考え方
- 金融商品の種類や特徴
- 商品の指定方法や購入の仕方
- 資産運用のシミュレーション
- リスクとリターンの考え方
などになります。
継続教育は経験や年代に応じた設計を
継続投資教育は従業員の経験値や年齢層に応じたプログラムを用意します。
導入教育後、最初の継続投資教育ではあらためて基礎的な内容を確認する内容で問題ありません。というのも、投資に慎重な従業員にこそ、あらためて制度の意義を教育しておく必要があるからです。
従業員が投資に慣れてきたら内容もレベルアップ。従業員は毎年1回、運営管理機関から運用実績について報告を受けます。この機会を捉え、実績の振り返りやポートフォリオの組み換えを兼ねて実施するとよいでしょう。
また、若年層と中高年層では資産運用へのアプローチが異なります。若年層は退職まで時間的余裕があるので、積極的な投資も組み入れ資産を増やしていくことも検討しやすいです。これに対し中高年層は定年退職へ向け安全資産へのシフトを進め、確実な資産形成を図るケースが多いです。年代だけでなく、個々人の価値観や立場によっても投資の考え方は異なります。レベルにマッチした継続投資教育を実施するには、それぞれの立場に寄り添った投資教育を実施することが重要です。
金融機関など専門家に委ねるのが安心
継続的な投資教育は従業員の将来設計に欠かせないサポートとなります。しかし、営業拠点が離れている、従業員を集めるのが困難などの理由で、なかなか企業として対応しきれないケースも多いでしょう。きめ細かい投資教育は金融機関に委ねるのが安心です。りそな銀行では集合セミナーをはじめ、スマホでも利用できる投資教育のコンテンツを数多く用意しています。この機会に相談してみてはいかがでしょうか。
(※)厚生労働省 確定拠出年金制度「企業型年金の規約数の推移」(規約数、事業主数、企業型年金加入者数)
企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。