企業ガバナンス不全による落とし穴に陥らないために

ガバナンスは企業において最も重要とされる要素の1つです。一度ガバナンスが不全に陥ると、企業内部の信頼関係や業績、評価に重大な影響を及ぼします。過去に起きた上場企業による粉飾決算や不正会計、保険金の不正請求問題などは、すべて企業ガバナンスの欠陥から生じた典型的な事例です。
今回はガバナンスの重要性やガバナンスを強化するメリット、そしてガバナンスを整備する方法について考えます。

ガバナンスとは「健全経営への管理体制」

最初にガバナンスの定義を確認しましょう。
「Governance」は英語で「統治・支配・管理」と訳されますが、ビジネスの文脈では「企業経営を健全化するための管理体制」という意味合いです。
具体的には、法令違反を防ぐための仕組みや規則を企業内に設け、それらを通じて管理体制を整備し強化。組織全体に倫理的な文化を根付かせ、不正行為や情報漏えいのリスクを減らします。

ガバナンス強化のメリット

ガバナンスの強化は不正防止が大きな目的の1つですが、企業経営にとってメリットも生み出します。

労働環境改善

従業員の業務範囲や責任範囲を明確にすると、タスクの漏れを防ぎ、該当する責任者が業務を監督するようになります。命令系統を整理すれば、従業員は複数の上司の指示による混乱を避けられます。これにより、より働きやすい労働環境が実現し、離職率の軽減も期待できるでしょう。

企業価値向上

近年、経営の透明性や平等性を確保した企業が支持される傾向にあります。不正を監視する体制の確立と同時に、財務状況を開示し企業経営の透明化を図ることも必要です。結果、経営者の独善的な運営や不祥事が起きにくくなり、透明性を重んじる優良企業としてのイメージが構築されます。

人材採用にもプラス

透明性とイメージの向上は、人材確保にもプラスに働きます。新規採用はもちろん、優秀な人材が転職先として選ぶ可能性が高まるなど人事面での好影響は計り知れません。

収益力向上

トップの明確な経営方針を揺るぎなく内部に浸透させることも、ガバナンス強化の重要な目標です。明確な活動指針があれば、従業員の生産効率アップにつながり、収益力も向上します。

ガバナンス強化・改善のポイント

具体的にガバナンスをどのように強化すべきか、主なポイントを挙げてみます。

内部統制の確立

経営の意思決定プロセスを明確にし、社内ルールの策定と運用状況の監視を強化しましょう。これには業務規則の明文化と、担当者や部門の役割をはっきりさせることが含まれます。

独立した監査機能の導入

社内外の適切なバランスを取りながら、第三者による監査を実施します。社外取締役や監査役の設置、内部通報制度の有効活用により、ガバナンス体制の強化と透明性向上を図りましょう。

継続的なコミュニケーション

組織文化の育成と倫理的行動を促進するために、ガバナンスの意義や目的を常に全社で共有します。教育プログラムを取り入れる方法もあります。ガバナンスの理解を深め、全員が責任ある行動をとれるようにしましょう。

全社的にガバナンスの重要性を意識しよう

ガバナンス強化が単に不正行為や情報漏えいなどの企業リスクを減らすだけでなく、労働環境の改善や企業価値の向上にも寄与することをご理解いただけたかと思います。非上場企業や中小企業でもガバナンスの強化は実施可能であり、また意識すべき重要な課題です。
ガバナンス強化は経営者のみならず、従業員一人一人の意識と行動がカギとなります。ガバナンスの重要性を従業員に伝え、全社としての取り組みを進めることが、企業の信頼性と社会的責任を果たす上での基本と言えるでしょう。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年4月12日時点の内容となります。
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