フル在宅勤務、社員の心のケアできていますか?

コロナ流行下で爆発的に普及したテレワーク。フル在宅勤務の部下を持つ管理職の方も多く、そのケアに戸惑っている声を耳にすることも多くなりました。
自宅での勤務はオフィス勤務とは状況が大きく違い、テレワークならではのストレスが部下のメンタルに影響を及ぼすことも十分考えられます。その原因と対策について探っていきましょう。

テレワーク環境でのストレス要因とは

テレワーク下における職場のストレス要因となるものは多く、そして精神だけでなく実務の上でも影響が大きいものも存在します。
厚生労働省が公開している「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」(※1)でも大きく取り上げられていますので、簡単にご紹介いたします。

対人関係

周囲への相談のしづらさ、職場の人間関係構築、状況把握のような管理の悩みなど

職場環境(物理的要因)

自宅等での作業環境の不足による集中力や作業効率の低下、経済的負担など

仕事の量的な負担

直接姿が見えない環境になることで、作業者・管理者ともに仕事の役割分担や内容などの把握に支障が出るなど

適性度

ICT(※)に苦手意識のある労働者が、業務遂行が非効率的になったり、テレワーク自体にストレスを感じる

  • :Information and Communication Technology(情報通信技術)。PCやスマートフォンなど、さまざまな形状のコンピュータを使った情報処理や通信技術の総称。

職場環境(心理社会的要因)

業務時間外の対応によるハラスメントや、テレワーク実施の可・不可による処遇や評価での不公平感や不安を感じる

この中でも、複数の要素に影響している原因として注目したいのが「コミュニケーションのとりにくさ」です。テレワーク環境下特有のストレス要因としても挙げられており、多くの企業で問題になると見られています。サイボウズチームワーク総研の実施した調査では、在宅勤務での「コミュニケーションがしにくい」と感じている人は、回答者の5割にも及ぶという結果(※2)も出ています。

コミュニケーションが不足すると?

テレワークにより物理的な距離が断絶すると、職場情報の収集はツールを用いたコミュニケーションに頼るほかありません。しかし、自主的なチャットや通話などでは把握できる情報量の不足や会話機会の減少を避けることは困難です。そのような状況では、コミュニケーション不足による諸々の問題が発生します。

  • 部署内での会話がしづらくなることで、部署への新入者の人間関係構築が阻害される
  • 周囲の状況が見えづらくなることで、仕事の進行状況や職場全体の状況が掴みにくくなる
  • 職場での視認による気づきなどが失われるので、管理者がフォローしにくい

このように、先に挙げたストレス要因の多くがコミュニケーションの不足によって引き起こされていると分かります。

コミュニケーション不足の対策とは

ストレス要因でのメンタルケアなどは、個々のケースに場当たり的に対応することが難しいものです。できれば根本的なコミュニケーション不足の部分を解消することが望ましく、組織ぐるみで仕組みづくりによる対処が必要となるでしょう。

「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」(※1)でも取り上げられていますが、コミュニケーション不足の対策として「1on1面談の実施」「バーチャルオフィスの導入」「チーム定例の実施」など、画面越しであっても対面で肉声のコミュニケーション機会を増やす試みを、多くの企業や組織が導入しています。

ただし、これらは一定の成果を上げている事例が多く報告されていますが、仕組みを形だけ導入して効果が出るというものではありません。従業員の本音を聞き出せるような信頼を築き上げ、また本気で職場のメンタルケアに向き合う意志をもって仕組みの運用をしていくことが肝要です。


今回は在宅勤務のケアの中でも、最も問題になるであろうテレワークのコミュニケーションのとりにくさについてお送りいたしました。
本記事内で取り上げた例の他にも多々要因はありますが、この問題についてはコミュニケーションを円滑にする仕組みづくりが大事だということは共通しています。管理職個人レベルではなく会社レベルで対策にあたり、ときには専門家に相談して包括的な仕組みづくりをしていきましょう。

(※1) 厚生労働省 テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き
(※2) サイボウズチームワーク総研「テレワークでの職場内コミュニケーション 「業務の話」は1日あたり「30分未満(0分含)」6割 「業務以外」は「0分」4割 ────若手ほど「コミュニケーションしにくい」と感じている傾向が」

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年4月19日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。