部下も組織も成長する「叱り方」のコツ

管理職として仕事をしていると、成果を出した部下を褒める機会も、失敗した部下を叱る機会も多く存在するもの。部下の仕事を評価する際は適切なフィードバックを行い、さらなる成果を追求していきたいところです。
ひと口にフィードバックと言ってもさまざまなやり方があります。そのうちのひとつ、「ネガティブフィードバック」をご紹介します。

ネガティブフィードバックとは

「成長を促す」「目標を達成する」「パフォーマンス向上に期待する」のがフィードバックの基本形。ネガティブフィードバックは、相手の行動の問題点を指摘するフィードバックです。いわゆる「叱る」フィードバックであると考えて差し支えありません。

「叱る」、つまり相手の建て直しのために行うフィードバックなので、当然ですが相手にとっては耳が痛い、厳しい内容になりがちです。そのため言い方には細心の注意を払う必要がありますし、言う相手も選ばなければならないという、難しいフィードバックといえるでしょう。また、ほめることで現状に満足してしまうタイプの部下に成長を促す目的でも使用されることがあります。

こういった特性を把握し、必要に応じてフィードバック手法を使い分けましょう。

具体的手法

具体的には以下のようなポイントを押さえて、部下にフィードバックをします。

  • 客観的に見て、現状では厳しい評価になることを伝える
  • 問題点を言葉で具体的に指摘する
  • 数値などを用いて、指摘事項を見える形にする
  • 指摘点の改善によって本人の成長が見込め、かつそれが可能だと期待していることを伝える

ただし、人格の否定や、理不尽を押し付けるようなものであってはいけません。ネガティブフィードバックを実施する立場になったなら、あくまで成長・改善に期待した指摘と促しであることを心がけましょう。

例:あなたは、資料作成などの作業を部下Aに依頼していたが、満足な出来の成果物ではなかった。また、この成果物は対外的に使われるものであり、チーム全体の評価につながるものである。

この場合のネガティブフィードバックとしては以下のようになります。

「Aくん。君に作ってもらった成果物だが、これではデータの羅列で分析に乏しく、期待はずれのものだった。命じた私の責任でもあるが、もう少しチームに貢献できるものができないか、これの何が問題だったのかを考えてほしい。改善不可能なものだとは思っていないし、君ならきっとできるはずだ。ぜひ頑張ってほしい」

叱りの言葉の中にヒントも入れつつ次の機会も与えていて、その結果を見ることを伝えています。また、采配した本人としての責任を認めつつ、成長に期待していることを示してもいます。

やってはいけないフィードバック

ネガティブフィードバックの運用は、逆効果にならないよう特に注意するべきです。以下にフィードバックとして不適切な例を挙げます。

・主観的な意見を伝える

事実から客観的な指摘を行うのがフィードバックなので、本来の趣旨からも外れています。私的な意見を付け足す場合、「私はこう思った」と前置きして客観的事実と個人の感想とを区切るとよいでしょう。

・問い詰め、追い詰めに終始する

ダメ出しだけを行い、相手を追い詰めるような言動はNGです。「何がダメかは言ったから、あとは自分で考えろ」では成長を阻害する要因にもなるし、仮に成長したとしても方向性を制御できません。

・しばらく時間が経過したのちのフィードバック

フィードバックまでの期間が開くと、指摘された事項に関しての印象が薄れているので、指摘内容がピンときません。また、放置していた、蒸し返してきたなどの印象を与えてしまい、信頼関係が損なわれる可能性があります。

・大勢の前で指摘する

そもそもこの行為自体がパワーハラスメントの基準を満たしやすく、エスカレートすると職場いじめなどにもつながり、職場崩壊の危機を招くことになりかねません。


ネガティブフィードバックは、あくまで叱咤激励によりやる気を高めてもらうことが目的です。叱咤することでやる気が高まり、成長の糧とできるタイプの部下であることを見極めなければ逆効果になることもあります。
使いどころと使う相手を見極めるのが難しいのですが、問題点を克服し成長を促すには有効な手法です。褒めるフィードバックとうまく使い分けましょう。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年10月11日時点の内容となります。
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