営業組織を強化する、セールスイネーブルメント(Sales Enablement)という手法が注目を集めています。営業業務を効果的にサポートし、成果を最大限にすると言われていますが、自社に取り入れるにあたっては、経営者がセールスイネーブルメントの目的と手法を理解することが必要です。経営者の視点から見つめてみましょう。
セールスイネーブルメントとは?
全ての営業担当者が能力や成果を上げられるような営業組織にすべく、営業業務を改善する取り組みです。取り入れることで営業担当者の能力を高め、成果に繋げることを目指します。
営業職は、新規顧客の獲得や既存顧客を拡大して収益を上げるという、企業の成長に欠かせない役割を担っています。かつては営業担当者がそれぞれの営業ノウハウを持って業務を行い、属人化することが多い職種でもありました。
時代が進み情報が簡単に手に入るようになった一方で、顧客の購買行動が変化し、一人ひとりの情報量も圧倒的に増えました。これにより、商材やその周辺の業界・商材情報、営業ノウハウや手法などを、営業スタッフ個人の力だけで頻繁にアップデートすることは難しくなっています。
そこで、営業活動の改善をするための考え方であるセールスイネーブルメントの手法が注目されるようになりました。
営業プロセスを標準化・平準化することで個人の準備作業を圧縮し、顧客とのコミュニケーションに時間を割いて営業組織全体の生産性や成果を上げる、というこの手法。働き方改革が進み、効率的に働くことが重視され、長時間残業が推奨されなくなった現代にマッチしていると言えるでしょう。
セールスイネーブルメントの方法
具体的にどのような方法で取り組むのか見ていきましょう。
営業プロセスの可視化と最適化
現在の営業プロセスを各営業担当者からヒアリングし、まとめます。各人が持っている効果的な手法やツールを引き出せるように留意し、時間をかけて行います。
営業ツールの共有
営業活動に必要な資料や動画など、社内にあるノウハウを収集・一元管理し、不足分野があれば補います。欲しいときに簡単に取り出せる仕組みが必要です。
従業員教育
営業成績が優秀な従業員がどのようなプロセスで何を使っているのかが明らかになれば、業務経験が浅い従業員にそれを伝授できます。個人のスキルアップ向上のため教育に時間を割き、組織のボトムアップを図ります。
効果検証・営業戦略の策定
デジタルツールを活用してデータ収集し、各ツールで蓄積される顧客データを一元管理することで、どの施策が効果を発揮しているかの検証を行いましょう。検証結果を次の営業戦略に繋げ、PDCAを回していきます。
従業員に向き合う経営者の心構えが大切
セールスイネーブルメントの導入成果を上げるためには、経営者こそがその目的と手法を十分に理解する必要があります。
現在自社に蓄積されているナレッジに目を向けることから始め、それらを含めた営業プロセス全体のデータを収集分析しながら、データ重視の意思決定ができるようになることが重要です。従業員のスキル向上に目を向け、経営者は変化に対応するための柔軟性を持つことが求められます。
人と人との結びつきである営業職において、「営業の自動化」という言葉にはなかなかなじまないかもしれません。しかし、自動化するのはあくまでも営業手法であり、ヒト同士のコミュニケーションが失われることはありません。
従業員が限りある時間の中で最大限のパフォーマンスが上げられるよう、経営者自らセールスイネーブルメントをうまく使いこなしていきましょう。