公益財団法人不動産流通推進センター 事業推進室 参事 渡邉宏
大手不動産流通会社にて、仲介部門に15年、新築部門に5年、経理・人事などスタッフ部門に9年、ファンドビジネスや駐車場関連の部門に5年間従事。2017年から不動産流通推進センターの職員として、出版事業や教育プログラムの企画・開発業務に従事。「ヒヤリハット!不動産仲介トラブル事例集」の企画・原稿作成を担当。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。
自然災害や事件などによって、不動産取引にまつわる法律は改正されてきました。こうした最新の傾向をしっかり把握し、注意深くリスクをチェックするには、やはり優れた仲介業者の存在が欠かせません。仲介業者選びのコツについて、公益財団法人不動産流通推進センター 事業推進室 参事の渡邉宏氏に話を伺いました。
災害や事件によって法律が厳格化される
大きな災害や、事件・事故をきっかけに法律が作られたり、改正されることがあります。不動産に関しては、例えば2021年夏、静岡県熱海市で大規模な土砂災害がありました。この土砂災害を契機に通称「盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)」が制定されたのは記憶に新しいところです。事件も同じで、2005年のいわゆる「姉歯事件」で注目された耐震偽装問題を契機に建築基準法が改正されています。
このように不動産取引にまつわる法律もまた、大規模な自然災害や事件・事故をきっかけに新たに制定されたり、改正、つまり厳格化されてきたという歴史があるのです。こうした最新の傾向をしっかり認識して取引をするためには、やはり優れた仲介業者の存在が欠かせません。
ゲリラ豪雨による浸水被害に要注意
災害や事件の後は、それに類似する相談が増えます。姉歯事件、そして東日本大震災以降、耐震問題に関する相談が増えた時期もありました。近年増えているのは、浸水にまつわる相談です。大雨による堤防の決壊は近年、全国で被害が出ています。堤防決壊による浸水リスクについては、国土交通省の「ハザードマップ」で確認することができます。また、国交省は不動産取引時、重要事項説明の場で説明するように指導しています。
しかし、近年増えているゲリラ豪雨による浸水被害は、雨の量が下水道の処理能力を超えたり、河川など排水先の水位が高くなった時に雨水を排水できなくなることが原因です。これはハザードマップではわからず、重要事項説明には入らないため、厄介です。
このように、不動産取引の現場では重要事項説明から漏れてしまうリスクというのも存在するのです。こうしたわかりにくいリスクについてもしっかり売主に注意喚起してくれる仲介業者を選びたいものです。
仲介業者選びのポイント
では、良質な仲介業者はどうやって見分ければよいのでしょうか?
まず確認していただきたいのは、「地域での実績」です。また、取引したい物件のジャンルで豊富な取引経験を持っているかどうかもチェックしておきましょう。これらを踏まえたうえで、「取引実績数」についても確認しておくことをお勧めします。取引を考えている仲介業者が、過去、大きな取引を数多くこなしているかどうかを確認するのです。
さらに、過去にトラブルを起こしている仲介業者は避けたほうがいいでしょう。役立つのが国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」(https://www.mlit.go.jp/nega-inf/)です。このサイトでは仲介業者の行政処分歴が調べられます。
最後に、抽象的な言い方になりますが、売買を急かせる業者は避けたほうが無難です。やはり顧客の要望や売買の目的をしっかりヒアリングし、顧客にとって最適な選択を提示してくれる仲介業者が望ましいのです。
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