3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2022年秋に発行された、首都圏向けの内容となります。
【Market REVIEW】世界の主要中央銀行は利上げの最終着地点の模索を始める
- FRBは11月のFOMC(連邦公開市場委員会)で4会合連続となる0.75%幅の利上げを決定しました。一方、声明文では“これまでの引き締めの累積的効果と効果発現までのラグ(時間差)を考慮する”との一文が追加され、今後は利上げペースを減速させる可能性を示唆しました。ECB(欧州中央銀行)は10月に2会合連続で0.75%の利上げを実施した上で、金融政策の正常化が大きく進展したと評価しています。カナダ、オーストラリア中銀も既に利上げ幅の縮小に着手しています。今年に入り日本を除く主要国の中央銀行は揃って異例のスピードで利上げを進めてきましたが、各国とも景気への影響を見極めながら利上げの最終段階への移行を模索し始めたと考えられます。
- いずれの国もインフレ率が歴史的な高さにあることから、金融緩和への転換時期を見通せる状態ではありません。ただ、利下げという「追い風」は期待できないまでも利上げの「逆風」が弱まるだけでも、株式などのリスク資産にとっては投資環境の好転となります。
- この処、株式市場では「小型成長株」の底堅さが目立ちます。世界的に金利が上昇し始めた2020年終盤~2021年初めに株価がピークをつけたものが多く、2年近い調整が続いてきました。中央銀行の引き締め姿勢に微妙な変化がみられる中、敏感な投資マネーの一角がそうした「小型成長株」の底値買いに向かい始めた可能性があります。
(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)
インフレ率の見通しは上方改定
- ESPフォーキャスト11月調査は、2022年度の日本の実質経済成長率を+1.9%、インフレ率(消費者物価上昇率)を+2.7%と予測しました。2022年2月下旬のウクライナ侵攻以降、2022年度及び2023年度のインフレ率見通しには上方改定の傾向がみられます。
- 帝国データバンクによると、2022年1〜10月の食品値上げは合計で約19,800品目に及び、特に10月には約6,700品目の値上げが集中しました。原材料や包装資材等の高騰に加え、2022年春頃からの急速な円安の進行が「値上げラッシュ」の引き金になったと考えられます。
百貨店を中心に小売販売額は堅調
- 経済産業省の商業動態統計によると、2022年に入り小売販売額は堅調で、特に百貨店(既存店)は5月に前年比+56%、8月に同+25%と増加幅が大きくなりました。
- 東京特別区をみると、各月の百貨店販売額(既存店)は2021年9月以降前年を上回っており、高額品の販売が比較的好調と考えられます。
- V-RESAS及びAgoopによると、2022年11月第1週の新宿駅周辺における区外居住者(推定)の滞在人口は、2019年同期と比較して概ね7〜8割、渋谷駅周辺は概ね7割であり、コロナ前を下回る水準です。
マンション価格は新築・中古ともに上昇継続
- 不動産経済研究所によると、2022年9月の新築分譲マンション平均価格は、東京都区部で8,758万円(前年同月比は+1.8%)で、㎡単価も同+5.6%の上昇です。神奈川県は5,378万円(同+4.8%)、埼玉県は5,254万円(同+6.5%)であり、都外でも価格上昇がみられます。
- 2022年の首都圏の新築分譲マンション契約率は、9月には61.6%で、6月以降は好不調の目安の70%を下回り60%台で推移しています。
- 東京カンテイによると、2022年9月の70㎡当たり中古マンション価格は首都圏で前年同月比+11.0%の4,777万円、東京23区で同+7.6%の6,926万円(27か月連続上昇)でした。
2023年・25年にオフィス新規供給が増加見込み
- 東京都区部では2023年に大量供給予定を控え、需給の変化によるオフィス市況への影響が懸念されます。2023年の次は、2025年に新規供給が増加する見込みです。
- 三鬼商事によると、2022年10月の東京ビジネス地区の空室率は6.44%(前年同月比▲0.03ポイント)でした。既存ビルの空室率が緩やかな低下基調であるほか、中央区などで大規模ビルが相次ぎ竣工したこともあり、新築ビルは6月以降40%前後で推移しています。
- 2022年10月の東京ビジネス地区の平均賃料は20,114円/坪(前年同月比▲690円/坪)であり、緩やかな下落が継続しています。
【Market TOPICS】2022年都道府県地価調査(東京圏・全国)
- 2022年の都道府県地価調査(7/1時点)によると、東京圏の上昇率は住宅地+1.2%、商業地+2.0%で、前年より上昇幅が拡大しました。
- 都心から距離のある住宅地でも、住環境が良好で生活利便性の比較的高い地域は上昇しています。
- 住宅地・商業地ともに、全国の上昇率1〜5位は北海道でした。札幌市に隣接する北広島市では、ボールパーク(新球場)事業と駅前再開発が進展中です。
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