日本社会の高齢化を受け、中小企業においても経営者の高齢化が進んでいます。大切に育ててきた会社を確実に次世代に承継するためには、どのような対策を行うべきでしょうか。
事業承継とは
会社には固有の技術やサービス、そこで働く人々がいます。事業承継とはそれらの財産に想いを乗せて次の世代に引き継ぐことだと言えるでしょう。
中小企業庁の調査(※1)によると、事業承継の完了までには3年以上を要したとの回答が半数以上あり、場合によっては10年以上かかる場合も……。事業承継を行っていく過程では不測の事態も起こり得るため、準備をするのに早すぎるということはありません。
ここでは、事業承継について、3つのステップでご紹介します。
Step1準備〜経営状況の把握
準備段階では経営状況を把握し、課題を整理することが必要です。
後継者が会社を引き継ぐ覚悟を決めるにあたり、経営課題はあるのか、もしあるとすればどのように解決して引き継ぐのか、を考えなければならないからです。
具体的には、経営理念・従業員の技術や技能、ノウハウ・知的財産権や取引先との人脈・顧客情報などの情報を整理します。
また、会社の資産の整理と同時に経営者個人が保有する資産も明確にしておくと良いでしょう。事業承継のタイミングで、経営者個人の資産承継も合わせて検討することで、資産全体の円滑な承継に繋がる可能性が高いためです。経営と資産をいつ、どのように引き継ぐのか、承継方針を決めましょう。これが後継者を選定する条件にも繋がってきます。
Step2後継者の選定〜親族内承継・親族外承継・M&A
事業承継において後継者選定は最重要ポイントです。後継者不足は深刻な社会的課題となっており、業績悪化や将来性の問題のみから廃業するのでなく、後継者が見つからないことによる廃業が約3割を占めているという調査もあります。(※2)
承継先を大きく分けると親族内承継と親族外である従業員への承継、第三者への承継という3つがあります。中規模企業では親族内承継と従業員承継が約7割を占めています。
親族内承継や従業員承継では準備期間を長く取ることが可能です。承継の打診から後継者の育成を中長期で考えられること、社内外への理解を得られやすいことがメリットとして挙げられます。早期に準備を進めることで複数の後継者候補を教育・育成しながら、後に経営能力がある人を見極め後継者に選定する、といったこともできます。
親族や従業員に後継者が見つからなかった場合は、第三者へ事業を譲渡・売却・統合するM&Aという方法もあります。昨今では後継者不足の影響により中小企業のM&A件数も増加しているようです。
Step3コストの試算〜資産の見える化と議決権の集約
Step1で経営状況や課題を把握し、Step2で後継者が決まったら、承継方法を検討するのがStep3です。承継相手や方法によってコストが大きく変動するため、専門家と相談して早い段階で検討を始めることが重要です。株式や議決権の引き継ぎ方やタイミング、議決権の集約方法など、承継相手との合意形成が必要になる場合もあるでしょう。場合によっては、資産の有償譲渡が発生する可能性も考慮すべきです。
ただ、さまざまな条件で承継が円滑に進まないこともあります。
例えば親族内承継においては資産を贈与・相続により移転する場合、贈与税・相続税の資金が思うように準備できないというケースです。
このような場合は、2027年まで実施されている納税猶予、免除の特例措置「事業承継税制」(※3)の活用も考えると良いでしょう。なお、制度利用計画の提出は2024年3月(※)までとなります。
- 編集注記 2023年12月14日に「令和6年度税制改正大綱」が公表され、2026年3月末まで延長される見通しです。
これらを個人で判断するには難しいことが多く、顧問の公認会計士や税理士、地元の商工会など、話しやすいところへの相談から始めることをお勧めします。また、事業承継の専門知識を有する金融機関や国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」への相談も有効です。
長年かけて経営者が大事に育ててきた会社。引き継ぐ際にも時間が必要です。早めの着手でしっかりと次の世代に繋いでいきましょう。
りそなグループでも事業承継に関する総合的なご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
※1 中小企業庁「事業承継ガイドライン 第3版」
※2 日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2023年調査)
※3 国税庁 事業承継税制特集ページ
事業承継について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。