最近話題のオープンイノベーションとは

企業内・外のアイデアや技術を活用して新たな価値を生み出す取り組み「オープンイノベーション」が世界的に注目されています。日本でもスタートアップ企業から中小企業、大企業に至るまでオープンイノベーションへの関心は高まっており、大企業のオープンイノベーション実施率は47%に(※1)。中小企業でも30%が「革新的なイノベーション活動に取り組んでいる」との調査結果もあります(※2)

なぜオープンイノベーションが注目されているのでしょうか。理由や特徴について説明します。自社に取り入れてみたい、新規事業の成功を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションについて、あらためて確認しておきましょう。

オープンイノベーションとはズバリ、「自前主義から脱却」すること。企業内・外の技術やアイデアを組み合わせ、革新的な価値を作り出す手段です。企業内・外関係なく、お互いにとって有益な知識や技術について協力し合い、単独では実現が難しいビジネスを加速させる目的があります。2003年にハーバード大学経営大学院の教授だったヘンリー・チェスブロウ氏によって提唱されました。

オープンイノベーションには「インバウンド」、「アウトバウンド」、「連携」の3タイプがあります。

  • インバウンド
    インバウンドは他社との協議や外部の技術を取り込み、自社に不足する部分を補完することで新たな商品やサービスを生み出していくこと。大学や研究機関との産学連携が該当します。
  • アウトバウンド
    アウトバウンドは自社の技術や知識を外部に提供し、新たなアイデアを募る方式です。他社との協働開発や協業などが含まれます。
  • 連携
    連携はインバウンドとアウトバウンドの両方を組み合わせたもの。外部の技術や知識を積極的に取り入れたり、自社の技術や知識を外部に広く提供したりします。事業連携や、一つの目的を実現するために技術者が集まり集中して作業するオープンイノベーションの手法「ハッカソン」などが該当します。

オープンイノベーションが求められる背景

オープンイノベーションが広まった背景にはいくつかの要因があります。主なものとして
・顧客ニーズの多様化
・製品ライフサイクルの加速
があると言われます。

価値観やニーズの多様化に伴い、既存の商品やサービスでは満足できない人が多くなってきています。グローバル化やIT化が進んだこともあり、複雑でより高度な商品が出回り、求められるサービスの質も高まったため、新しい価値を生み出す必要があるのです。

製品ライフサイクルとは、新たな商品やサービスが販売されてから需要がなくなるまでの過程のことです。日々新たな製品やサービスが登場することで、一つの製品・サービスに対する需要が急速に減少する可能性があります。従来以上の開発スピードが求められ、1社の技術力だけで対応するのは難しくなっていると考えられます。

オープンイノベーションの実例

  • ファーストリテイリング
    アパレルブランド「ユニクロ」の大ヒット商品「ヒートテック(R)」や「エアリズム(R)」は繊維メーカー東レとの共同開発。2006年以降は戦略的パートナーシップを結び、素材メーカーとSPA(製造小売りモデル)の境界を越え、素材段階から商品まで一貫した開発体制を構築しています。
  • 大阪ガス
    2009年からオープンイノベーションを採用。業務提携によって組織外のアイデアと技術を活用しています。外部の技術系企業との協業により、路線バスに「工事現場をAIで自動認識する車載カメラ」を搭載してガス管パトロール業務を実施するなど、実際の成果につながっています。

企業の成長を促す原動力にも

オープンイノベーションにはリスクもあります。技術やノウハウが流出する恐れがありますし、自社のみで取り組む事業に比べ利益率は低下する場合もあります。秘密保持契約の締結や連携先とのルール確立が不可欠であり、短期的な利益ではなく中長期な視点で考えることも求められるでしょう。

リスクに対する備えを万全にできれば、オープンイノベーションによって一企業だけでは成し得ない新たな価値を生み出す可能性が広がります。企業の経営環境が厳しさを増す中、オープンイノベーションの導入で企業の長期的な成長につなげてみてはいかがでしょうか。

(※1)新エネルギー・産業技術総合開発機構「オープンイノベーション白書第二版」(2022年6月公開)
(※2)東京商工会議所「中小企業のイノベーション実態調査」(2021年3月11日発表)

課題解決の考え方について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年5月31日時点の内容となります。
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