「人材が定着しやすい会社」と「定着しにくい会社」の違いとは?

中小企業の人材不足が深刻化している昨今、「人材が定着している企業」には一定の共通点が見られます。本記事では、「人材が定着している企業」「定着していない企業」を分析し、中小企業が直面する大きな供給制約である人手不足を乗り越えるために、どのような取り組みを行えばいいかを解説します。

働き手のニーズは変化している

2019年から「働き方改革関連法」が施行され、コロナショックを機に「新しい生活様式」が広まるなど、働き手を取り巻く環境は大きく変わりました。そのなかで、働き手のニーズやモチベーションもまた、変化しつつあります。

2019年から2023年にかけて行われた株式会社パーソル総合研究所の調査によれば、近年、働き手が仕事を選ぶうえで重視することとして、「やりがいを感じられること」「自分のやりたい仕事であること」という回答の割合が減少傾向にあることがわかりました。逆に増加率が高かったのは、「資格や免許の取得に繋がること」「色々な知識やスキルが得られること」の割合です。今の働き手は「自身が成長できている」という手応えを求めているといえますが、若手の離職や定着に関しては、下記の記事もご参照ください。
求められるのは「ホワイトかつ成長できる職場」
ホワイトすぎる職場から若手が去る理由は?

また、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査では、転職者が今の勤務先で働こうと思った理由として、「今までの経験が活かせる仕事だったから」と回答する割合が男女ともに高いという結果になりました。

こうした調査結果からは、本人の経験や能力を発揮できる業務分担や配置を検討することが有効だと思われます。

「人材が定着する企業」の共通点

それでは、実際に中小企業は、人材の確保・定着に向けてどのような取り組みをしているのでしょうか? 株式会社帝国データバンクの調べによると、最も多いのが「賃上げ」であり、調査対象となった8割以上の企業が取り組んでいました。ほか、「専門性に応じた業務分担・配置」については、6割以上の企業が積極的に、あるいはある程度行っているという状況です。

この調査で注目すべきは、「キャリアプランの明確化」を行う企業が3割程度にしか満たなかった点です(下図参照)。働き手自身が成長する将来像を描けるか否かは、働き手のモチベーションを向上させる重要な要因といえます。実際に「人材が十分に定着している」という企業では、この取り組みを積極的に行う企業が多いことがわかっていますが、これに取り組む企業は少ないというのが実情です。

人材の確保・定着に向けた人事関連施策への取組状況(中核人材・業務人材が十分に定着してる企業)

また、企業の人手不足を解消するためには、「女性が活躍できる職場」もキーワードのひとつです。今回の白書では、女性は労働時間や休暇などを重視する傾向性も指摘されています。帝国データバンクの調査によれば、調査対象となった企業のうち7割超が、「休暇制度の充実」と「労働時間の見直し」を「積極的に行っている」「ある程度行っている」と回答しました。2019年には女性活躍推進法が改正されましたが、女性人材を定着させ、女性人材の活躍を促進させることは、企業にとって重要な命題といえます。

「従業員満足度調査」が定着率改善のカギとなる

人材を定着させるためには、働き手から「働き続けたい」と思われる職場を目指す必要があります。そのために欠かせないのが、従業員の満足度調査です。

帝国データバンクの調査では、従業員数が大きい企業ほど社内調査を行い、従業員満足度を確認している傾向があります。特に従業員数301人以上規模の企業では、その過半数が自社での社内調査を行っていることがわかっています。従業員調査は自社で行う必要はありません。301人以上の規模の企業の約3割が、外部委託で満足度調査を行っています。いずれの方法にせよ、従業員が仕事や職場環境、会社の方針や制度などにどの程度満足しているかを調べることで、従業員のモチベーションを向上させるヒントを得ることが期待されます。

働き手のモチベーションを高めるためには、日常のコミュニケーションも重要な要因です。日常的にコミュニケーションを行う企業は、行っていない企業に比べて、中核人材(業務の中核を担う人材)・業務人材(業務の遂行を担う人材)のいずれも定着する傾向が見られます。たとえば業務人材においては、日常的なコミュニケーションが定着に寄与する影響は大きく、コミュニケーションを行わない企業は定着率が57.7%であるのに対し、行う企業の定着率は74.2%と、16.5ポイントの差がありました(帝国データバンク調べ)。

社内調査といった大がかりな取り組みでなくとも、日常的にコミュニケーションをとることで人材の定着につながる大きな可能性があることは、覚えておくべき点でしょう。

中小企業にとって、新規採用は大きな課題となっていますが、人材の確保は採用して終わりというわけではありません。採用した人材に、自社の企業活動に貢献し続けてもらうためには、働き手から「働き続けたい」と思われるような職場を目指すこと、働き手の満足度を高める職場づくりに取り組むことが不可欠です。

参考:中小企業庁「2024年版 中小企業白書」

人材戦略について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年3月28日時点の内容となります。
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