忙しくてもここだけチェック! 企業版DC「モニタリングレポート」の見方

企業型の確定拠出年金(DC)制度を導入していれば半年に一度ほど、「モニタリングレポート」が送られてきます。その中身は、毎回確認されているでしょうか? 「忙しくて時間がない」「難しくて分からない」という経営者も多いかもしれません。または、DCの運営管理機関からレポートが届くのみで、法改正で必要となるメンテナンスや情報提供などのフォローアップの不十分さにお困りかもしれません。今回は見るべきポイントや運用の改善につなげるコツをご紹介します。

レポートでチェックすべきポイント

レポートの中身が専門的で、分析の仕方が分からないと悩む経営者の方々に向け、「忙しくてもここだけはチェックしてほしい」という点をまとめました。

「未指図資産保有者」の人数

加入する従業員が運用する商品を指定していない場合、掛金は「未指図個人別管理資産」として現金で管理されます。この未指図資産保有者が多い場合、DCに加入して以降、掛金の配分指定を行っていない従業員が多い可能性があります。DC制度への関心や加入の認識が薄い人には、制度やその重要性を投資教育にて周知する機会を設けましょう。また、加入者の運用機会の損失を抑える「指定運用方法」を規約に定める検討も必要になるでしょう。

年代別の「リスク資産」割合

従業員の老後資金を確保する上で大切なDC。国内株式型、外国債券型、外国株式型、バランス型を「リスク資産」と定義したとすると、この「リスク資産」をどのくらいの割合で運用しているかについて、まず把握しましょう。

マーケット環境により、受け取れる額は上下します。仮にハイリスクな運用を長く続けていると、退職による受け取り期間が近づいて相場が下落すれば、回復させる時間が足りなくなってしまいます。そのため、運用期間に余裕がある若年層ではリスクを取り、徐々にリスク水準を減らしていくという「リバランス」(資産構成の見直し)を行うことが必要となります。

従業員の年代ごとに理想モデルは変化していきます。運用商品を指定して以降、一度も変更していない従業員は少なくないかもしれませんが、定期的なリバランスでリスクの抑制とリターンの安定化を図りたいところです。

一人当たりの平均保有本数

分散投資の観点からも、運用商品は複数保有することが望ましいとされています。平均保有本数が1~3本程度の場合、バランスファンドなど1本で分散投資ができる商品が含まれていれば問題ありませんが、定期預金など元本確保型商品の残高が多ければ、運用益を手にする機会を失うケースが多いと考えられます。商品ごとの残高や、元本確保型商品のみを保有している人数などもチェックしてください。

運用利回りの分布状況

利回りについて、従業員の間で格差が続いた場合、将来の受取額に大きな差が出ます。AさんとBさんが毎月1万円の積立で40年運用(積立元本480万円)したとします。Aさんは運用利回り4.0%、Bさんは1.0%だったすると、受取額はAさんが1,160万円、Bさんは590万円となり、約570万円の差となります。

レポート分析をへて検討すべきアクション

商品ラインナップの検討を

現在の商品ラインナップが自社の従業員が求めるものに合っているのか、分析してみることが大切です。ラインナップは幅広い選択肢が必要ですが、商品数が多ければいいというわけではありません。リスクをできるだけ抑え、数十年先を見据えて安定した運用成績を出すために、「分散投資」と「長期運用」を叶えるバランス運用が大切です。過去の確定拠出年金法改正でも、定期的な商品の見直しや商品ラインナップのバランス確保、運用方法の多様化を求めています。

商品ラインナップについては、「初心者でも分散投資しやすいバランスファンドがあるか?」、「少なくとも債券と株式、国内と海外が選択できるようになっているか?」を確認します。またコスト削減のため、購入費用(信託報酬)の高い商品が多くなっていないかにも注意が必要です。

投資教育の見直しのきっかけに

自社の加入者のDC利用状況や運用商品が年代別にどのような傾向があるかを把握することで、投資教育のターゲット層や実施内容・タイミングを考えるきっかけになります。先ほど、「運用期間に余裕がある若年層ではリスクを取り、……」とお伝えしましたが、若年層にリスクを伝えると不安を助長するのではと思われるかもしれません。しかし、若年層であれば運用期間に余裕があるだけでなく掛金自体も少額な場合が多いです。このような点がしっかり理解できて、不安を軽減できる投資教育にすればよいのです。

DCは加入者の責任において、自身の老後の生活設計につなげるものです。一人ひとりが主体的に向き合えるよう、これまで行ってきた投資教育の効果検証や今後行うべき投資教育の内容について検討しましょう。

「プロにお任せ」なら「ターゲットファンド型」が効果的

一方で、難しい相場を読んで複雑で多様な商品を理解し、長期にわたって目を配るのは、ハードルの高いもの。また、「加入者本人に代わって資産運用をする仕組みを」と望む声は根強いとされています。

「プロに任せたい」というニーズを前提にバランス運用を実現するためには、従業員の退職タイミングに合わせた「ターゲットイヤー型」のファンドが効果的です。残りの運用期間が短くなるにつれて「積極運用」から「安定運用」に変わっていくことから、終盤で相場が下落しても、大きなリスクを被りません。

運用改善は、りそな銀行にご相談を

「従業員の幸せ」を考え、企業型DCを導入した経営者の方が多いでしょう。加入する従業員が自身で運用し責任を持つのがDCですが、利用状況の把握は経営者の責務と言えます。

モニタリングレポートは、「運用の現状」「商品ラインナップ」両面で点検する、またとない機会になります。問題点があれば改善し、DC制度をより有効に活用することで、「長く安心して働ける」という従業員の安心感や満足度向上につながります。りそな銀行では運用方法やラインナップ、運営管理機関の見直しのご相談も承っています。

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年10月21日時点の内容となります。
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