「SBT認定」とは?
気候変動に関する国際的イニシアティブ「SBT(科学と整合した目標設定)」の認定を受ける日本の中小企業が増えています。
SBTとは「サイエンス・ベースド・ターゲッツ」の略称で、「パリ協定」の目標達成に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を意味します。国際NGOのWWF(世界自然保護基金)、CDP(旧・カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、WRI(世界資源研究所)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブである「SBTi」が運営しています。
企業は「パリ協定」が定めた、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で合意したいわゆる「1.5度目標」、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度未満に抑えることを念頭に、温室効果ガスの削減目標を策定し、SBTiから認定を受けることができます。
大企業中心で進んできた
これまで、同イニシアティブへの取り組みは大企業が先行してきました。コストや技術面からも、先進国の大企業が主たる対象と捉えられがちだったのです。しかし、グローバルなサプライチェーンの構築・浸透により、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減に向け、企業の大小を問わず認定を受けるケースも珍しくなくなってきました。中小企業といえども、サプライチェーン内の大企業から温室効果ガスの削減への取り組み状況の開示を求められる時代を迎えているからです。
例えば日本では今年4月に、2050年カーボンニュートラルを基本理念として明文化した改正地球温暖化対策推進法が施行されました(制定は1998年)。そもそも地球温暖化対策推進法は、一定以上の温室効果ガスを排出している事業者に排出量などを算定させ政府に報告する義務を課し、報告された排出量などは政府が集計し、公表する仕組みになっています。
また、東証プライム市場に上場する企業は、21年の日本取引所グループのコーポレートガバナンス・コードの改訂とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき、自社のサステナビリティや気候変動リスクに対する取り組みを開示することが求められています。この開示対応にはCO2排出量(サプライチェーン排出量 Scope1、Scope2、Scope3)の算定は不可欠です。そのためには当然ながら、取引先にも情報開示を求めることになります。そこには上場・非上場、大企業・中小零細の区別はありません。なおScope1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、Scope2は他者から供給された電気、熱などの使用に伴う間接排出、Scope3は先の1と2以外の間接排出を指しています。
今後、CO2排出量の算定は、各種の開示規制などにより永続的に対応が必須となる可能性が高いと考えられます。大企業に限らず、対応は待ったなしの状況にあるのです。また、例えば物流業界や建設業界のような、サプライチェーンが長く、多重下請け構造になっている業種では、多くの企業が対応を迫られることになるでしょう。
中小企業にも拡大している理由
なお、SBTには通常版と中小企業版があり、中小企業向けSBTには温室効果ガス排出量削減の対象範囲を狭めたり、削減目標の審査を不要とするなど負担の軽いコースも用意されています。中小企業がSBT認定を受けることは自社だけでなく、自社と取引する企業のCO2排出削減にもつながります。また、温室効果ガスの排出量算出により、取引先との良好な関係や新規顧客の獲得につながる可能性も高いといえます。もはや「脱炭素経営」は単なる流行ではなく、企業価値向上に不可欠な経営手法となりつつあるのです。中小企業もSBT認定を真剣に検討すべき時期を迎えているといえるのではないでしょうか。
りそな総研では、会員企業向けに無料でCO2排出量を簡易算出できるサービスを提供しています(https://www.rri.co.jp/consulting/scope.html)。SBT認定を取得するには多くの作業が必要になりますが、最初の一歩として、この無料算出サービスを役立てていただければと思います。
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。