何が目的?どう決める?「SDGs達成に向けた目標設定」

SDGs(持続可能な開発目標)が2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されて以来、SDGs達成に向けた自社での目標と取り組み内容を公開している企業が大手企業を中心に増加しています。サプライチェーン全体にSDGsの取り組みを求めるケースもあり、今後は中小企業でも順次対応を始める会社が増えていくことが予想されます。こういった背景から、自社でも取り組みを始めようと考えている企業が多いのではないでしょうか。
自社で取り組むにあたっては従業員や顧客などステークホルダー全体にわかりやすく説明できることが肝心であり、取り組みに対しての指標、具体的な目標を立てることは成否に関わるほど大切です。
目標設定の必要性や目標設定方法についてご紹介します。

なぜ、具体的な目標を設定するのか?

取り組みの実施に際して、企業がSDGsをビジネスとして取り込むための指針「SDGコンパス」では、その手順を5つのステップとして公開しています。

1:SDGsを理解する
2:優先課題を決定する
3:目標を設定する
4:経営へ統合する
5:報告とコミュニケーションを行う

この手順を見てみると、4の経営へ統合する、つまり取り組みを実施するための前段階として目標設定が必要なことがわかります。目標はこれからの社会で、自社がどうあるべきかを決定づける指針となります。

次に、目標を設定するにあたり、目標の粒度について考えてみましょう。
SDGsへの取り組みは、従業員が自分ごととして捉えることが不可欠です。「SDGsに取り組みましょう」というスローガンでは具体性に欠けているため、何をすべきかわかりにくいです。また、「世界の環境を守りましょう」といった大きすぎる目標より、「従業員が週に廃棄する紙を半分に減らしましょう」という目標の方が、より具体的でわかりやすく、自分自身も気をつけて行動に移すことができるでしょう。「廃棄する紙をゼロにしてください」という目標だと合意が得られないかもしれませんが、目標設定の妥当性を判断する端緒にもなり、皆で決めた目標であればより自分ごととして捉えられそうです。
「半分は難しいけど1/3ならできる」「1/3ができたら次は半分を目指してみよう」など、取り組みの成否もわかりやすく、目標があるとやる気や達成感にも繋がります。
具体的な目標が定まると関わる従業員が同じ方向に向かうことができ、外部ステークホルダーにもわかりやく映ります。「我が社は地球の環境を守ります」というスローガンより、「我が社はSDGsへの取り組みとして初年度は紙の廃棄量を半分にします」という方がより信頼感があり、また実現を予感させてもくれるでしょう。

目標設定のために何が必要か?

目標はやみくもに設定するのではなく、SDGコンパスにもあるように、優先して解決する課題(マテリアリティ/重要課題)を決め、それに向けたものとして設定することが大切です。マテリアリティマトリクスは自社に重要な影響を及ぼす要因をマトリクスにしたもので、SDGsの取り組みを策定する際に使われます。ぜひ取り入れてみましょう。

マテリアリティ(重要課題)の特定

マテリアリティを特定するには、自社の活動に関わるバリューチェーン全体での、社会・環境に与える影響を洗い出す必要があります。供給拠点・調達物流から生産・事業を経て製品の販売・使用・廃棄に至るまでの、バリューチェーン全体から課題を洗い出しましょう。
課題の抽出については、SDGsの担当者が行うだけでなく、外部からの意見や従業員の意見に耳を傾けることも大切です。従業員から意見を募ることにより、「自社の現在の事業活動が社会・環境に与える影響」や「自社と自分自身が、SDGsを通じて将来どのような姿を目指すべきか」を考えるきっかけとなり、SDGsの取り組みを自分ごととして捉えられるようになります。
こうして抽出した個々の課題について、データを収集して社会・環境に与える影響を分析します。この分析結果をもとに、課題の優先順位を設定していきましょう。

課題の優先度の可視化(マテリアリティマトリクス)

このとき、社会・環境課題としてSDGs17のゴールやアイコンを見てしまうと、どうやってゴールに近づけるか悩んでしまいがちですが、ゴールやターゲットはグローバルな課題であるため、自分ごととして考えにくい、ということがあるのかもしれません。そういった場合には日本政府が制定した「SDGsアクションプラン」の8分野からなる『SDGs実施指針』を見ると、日本全体の課題が俯瞰でき、より自社への関わりが深い課題もみつかりやすくなりそうです。

特定された重要課題から目標を設定

重要課題が特定できたら、次は課題解決のためにどのような目標を設定し、どのような施策を実施すればいいのかを検討します。

具体的な目標を公開することで、仕事を通じて社会的課題の解決に貢献する意義が従業員にも理解されやすくなるでしょう。
そして、仕事を通して社会的課題の解決に貢献していると感じられることで、従業員の仕事へのモチベーションの向上が期待できます。また、SDGsゴールの8「働きがいも経済成長も」や5「ジェンダー平等を実現しよう」に対応する、多様な働き方や女性活躍に関する目標を掲げることにより社内の人事制度や働き方改革に影響が及ぶ場合、より働きやすくなることで仕事への意欲が高まることも考えられるでしょう。

目標設定が難しい場合は

企業規模が大きく、SDGsの取り組みをプロジェクト化してメンバーを集めることができる場合は、自社で目標設定から実施まで行えますが、中小企業ではそのような対応をすることが困難な場合も多くみられます。
自社のみで考えるのは難しい、考える人材が居ない場合は、金融機関で目標設定のサポートをするサービスも存在します。また実施のための費用面に関しても、サステナビリティ対応をサポートする金融商品が提供されています。外部企業へ積極的にサポートを求めることも選択肢の一つとなるでしょう。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点の内容となります。
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