【SDGsインタビュー】株式会社ナンバースリー ~SDGsとCO2排出量削減の取り組みについて~

昨今、SDGsへの取り組みについて認知が広まってきている印象だが、まだまだSDGsへの取り組みについては頭を悩ませている企業は多い。そんな中、ウェルビーイングという経営戦略の策定や、日本で26社のみ取得しているネットゼロ基準のSBT認定を取得し、脱炭素社会実現に向けた取り組みを先進的に行っている企業がここにある。
株式会社ナンバースリー浅野社長、原執行役員に、SDGsへの取り組みのきっかけや取り組む意義についてお話を伺った。

インタビュー動画

他社に先駆けてSDGsに取り組まれたきっかけについてお聞かせください。

浅野社長
60期(2015年)のときに我々の業界、それとうちの社員、もちろん、うちの株主にも一部話を聞きながら、どういう形に、将来に向けてナンバースリーが変革するべきなのかということが主にテーマだったんですね。日本の国内だけではなく、海外も含めて幅広く美容業界の中でモノ作りするなら、新しいスタンダードを設けて進んでいかないといけないという事実が出てきたんですよ。
我々の会社の中に、いいところを何も変化せずにそのまま移行するという意識はなかったので、サステナビリティというより、我々の会社のキーワードというのは、リジェネラティブ(再生させる)という、どういう形に変化するか、変化と共にどういう会社になりたいか。第三者認証ということも含めて海外のスタンダードの動物性のものが入っていない商品を作りたい。ウェルビーイングカンパニーを目指しましょうと、そういうコンセプトにシフトしたんです。

インタビューにお答えいただく浅野社長
インタビューにお答えいただく浅野社長

SDGsの取り組みをどのように社内へ浸透させていきましたか

原執行役員
会社の中で一部の誰かがこういうことを訴えていっても、本当の部分で意識が変わらなければ行動に移らないと思います。我々はCO2削減のプロジェクトチームというのを立ち上げまして、全部署からそれぞれ選出をして、チームごとに目標であったりとか、活動内容であったりというようなことも計画を立てて、実際にどういう活動したかということを月に一回報告会をしています。実際に自分達がそれぞれの部署で活動を落とし込んでやっているので、他人事ではなくて、自分事というような形で意識づけになって行動に結び付いているんじゃないかなと思います。あと年に2回の全体の会議というのも行って、そちらで発表もしておりますので、どういう方向に会社が向かって取り組んでいるのかというのは浸透していっているんじゃないかなと思います。

インタビューにお答えいただく原執行役員
インタビューにお答えいただく原執行役員

浅野社長
経営戦略をマップに落とさない限り従業員全員は理解しません。会社の戦略マップというものを一度作りました。そこから部署ごとの戦略、財務の目線、お客さまの目線、内部プロセスの目線、最後に我々の教育の目線で、どういう形にそれぞれを変革するかという戦略に基づいて、自分の部署の戦略マップを自分で書くということになっています。毎年そういう繰り返しを6~7年ぐらいかと思うんですけれども、やっているんですね。

具体的にCO2排出量削減の取り組みとしてどのようなことをしていますか

原執行役員
CO2の削減ということで、世界的にGHGプロトコルという基準に沿っていくとScope1、2、3というのがあります。
Scope1が弊社の場合でしたら、工場で使っているボイラーにガスを燃焼させてお湯を沸かすというような形で使っています。今検討しているのがハイブリットタイプのボイラーで、ガスで沸かすのですが保温するのに電気を使うとか、そういうことを検討している状況です。あとは全社で16台営業車があるんですけれども、2台が電気自動車で1台がプラグインハイブリッドで残りの13台がハイブリッド車というような形に切り替えてきております。
Scope2、電気に関しては、まず屋上に太陽光発電を設置しております。こちらで大体年間16トンぐらいのCO2削減になっているかなと思います。さらに、カーボンニュートラルを目指していますので、残りのスペースに追加の太陽光パネルを設置して、こちらで大体24トンぐらい、合わせて40トンぐらいの削減になります。それ以外にも路面にパネルを埋め込むということもできるみたいですし、敷地内で出来る限りの再生エネルギーをつくれるようなことを進めていこうと思っているということと、電気の使用自体を減らしていくということで、館内(本社)の照明を全てLEDに昨年更改いたしました。
Scope3に関してはちょっと難しいんですけれども、商品の梱包を減らしたり、容器を統一して在庫自体を減らしていくとか、社員の出張を効率的に動かすとか、そういう形で少しずつScope3の方もCO2の削減というようなことを取り組んでいこうとしているんです。一番大きな排出先はサプライヤーさんですね、サプライヤーさんから原料、容器を購入しますので、それに関してのコントロールというのが他社様になるので、一番苦戦しているところです。

※1 GHGプロトコル:温室効果ガス排出量の算定・報告をする際に用いられる国際的な基準。サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量をScope1~3に分類する。

SDGsに取り組む前後でビジネスに変化はありましたか

原執行役員
弊社、美容室で使っていただいたり、販売していただいたりする化粧品を作っているんですけれども、グループとしてはOEMの会社も持っているんですね。例えばヴィーガンとかコスモスオーガニックとかハラールというような、自社で基準を作って訴えていくだけではなくて、第三者認証というか、国際認証をきっちりと取得していっていますし、国際認証を表示できるような商品を作れる会社様はそんなに多くはないと思うんですね。自分のブランドとしてOEMで作ってもらえないですか、という声は非常にたくさんいただいていますし、すごくビジネスにも直結して大きな影響があったかなと思います。
美容室もここ数年、差別化の1つの形として、ナチュラル志向とか、そういう商品を販売していきたいという美容師さんも増えてきているので、そういう美容師さんにとってはナンバースリーのような商品をぜひ使っていきたいという声をたくさんいただきますし、ビジネスにはプラスになってきているかなと思います。

ヴィーガンアワード2022企業賞受賞
ヴィーガンアワード2022企業賞受賞

SDGsに取り組む際のコスト認識についてお聞かせください

原執行役員
やっぱり新しいことを、今までやってきた以上のことをやっていこうと思ったら、当然コストも発生してきますけれども、我々は付加価値としてプラスできるんじゃないかなと考えているんですね。例えばヴィーガンのカラーであったり、ヴィーガンのパーマであったりというのは、消費者の意識も高まってきていますし、そういうヴィーガンカラーを新たなメニューとして展開しませんかという付加価値で、ある程度プラスアルファになってくるようなコストは吸収できるんじゃないかなと思っております。
消費者の意識も徐々に変わってきているので、そういう意識が強くなればなるほど、付加価値を反映しやすくなってくるかなと思うんですけれども、会社としてそういう方向性で差別化をしていくということで、多少なりコスト、先行投資を予算組みに入れていく覚悟は必要なんじゃないかなと思っておりますし、当社もそれなりの覚悟を持って進めていっているという形ではありますね。

株式会社ナンバースリー https://www.no3.co.jp/
ウェルビーイングを企業コンセプトにしている1951年創業の頭髪化粧品メーカー。商品開発には自社基準を定めると同時に、ヴィーガンやハラール等の国際的第三者機関による基準をもクリアするよう心掛けている。また環境に対しては、2050年までにCO2排出を実質ゼロにするという目標をSBT認定されており、太陽光パネル設置や全館LED化などを行なうと同時に、森林保護や海洋プラスティック削減のための活動にも参画している。

過去のインタビュー記事一覧」はこちらよりご覧ください。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年3月29日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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