就職活動において、企業選びに『SDGsへの取り組み』を意識している学生が増えてきている。すなわち、企業の経営者や採用担当者は、学生がSDGsへどういった意識を持っているのか、企業選びにおいてどういう点を重視しているのかを把握することは非常に重要になってきている。そこで、2021年7月にサステナビリティ推進本部を新設し、SDGsへの取り組みを推進している学校法人上智学院の副学長にお話を伺った。
近年、学生のSDGsへの関心は高まってきていると感じますか。
上智大学の場合は、もともと「一人一人の人間を大事にする」とか、あるいは「環境を大事にする」ということに対する関心が比較的高い学生の方が集まっていると思います。そのため、SDGsに関するサークルあるいは学生自身の活動というのも活発であると思いますけれども、最近になって、SDGsやサステナビリティについての活動あるいは関心はさらに高まってきているのではないのかなと思います。
一因には、学生職員の皆さんが熱心に活動をしてくださっていて、例えば、創立記念の際にSDGsに関する情報発信のイベントをしてくださったり、あるいは、学内のいろいろなところでキャンパスを変えていこうという目に見える活動をしてくださっていることがあると思います。もともと関心のなかった学生もいると思いますが、そうした活動に接して、こういうことを考えないといけないのかなと、少しずつ変わってきていると思います。
授業でも、やはりSDGsをテーマにする授業科目もいろいろ提供されていまして、りそな銀行さんにも講座を出していただいていますけれども、そういった講座をきっかけに、さらに関心を高める学生もかなりいます。そういった形でやはり関心が高まってきているのかなと思っています。
学生と企業のSDGsへの関心度のギャップは感じられますか。
また、どちらの意識が高いと感じられますか。
SDGsといっても大変幅が広いと思いますし、企業もさまざまだと思います。学生も本当にさまざまなので、一概にどちらが追いついている追いついていないという話ではないかなと思います。学生は学生としての目線でいろいろなことを考え、学生同士で議論をし、学生の生活の中で感じていることというのはあると思いますけれども、企業の方の目から見ると、もうちょっとこういう見方もあるのではないかということもあるかもしれません。逆に、企業の方はどうしても日々のビジネス、日々の業務に追われてしまうので、少し引いて幅広い視野から見るというのは、意外と学生の方ができている部分もあるかもしれません。私はそういう意味では追いつけている、追いつけてないというのではなくて、それぞれ経験しているもの、見えているものが違う中で、学生と企業の間でいいコミュニケーションができていくと、もっともっとお互いに良くなっていくのかなと思います。SDGsやサステナビリティというのは、今大学で学んでいる若い世代の将来の問題ということもあると思いますので、企業の皆さんが学生が考えていることに、もっともっと関心を持っていただけるとありがたいなと思います。一方で、学生も大学の中の学生目線での議論にとどまらずに、社会のいろいろな方々から学ぶ、いろんな方々と対話をするということに積極的に取り組んでもらえると、お互いにとってプラスになるのかなと思います。
産学官連携で取り組んでいくことの重要性や大学が取り組んでいくことについて。
SDGsやサステナビリティは、例えばビジネスだけの問題だとか、官庁だけが政府だけが頑張れば足りるというわけではなくて、私たちが将来に向かってどうしていきたいのか、私たちの社会をどうしていきたいのか、という共通課題だと思います。産学官がお互いに知恵を出し合って、やはりそれぞれが見えているものも違うでしょうし、持っているリソースも違うでしょうし、そういうようなものを出し合うことによって、新しい価値を生み出し、お互いに高めあっていくことができるような連携が大切なのかなと思います。そうした方向に向かっていく上で、大学がハブのような役割を果たせるとよいのではないかと思っています。実際、企業からお声がけをいただいたり、あるいは地域から一緒に何かしませんかというお声がけをいただいたりすることもあります。ある特定のビジネスにこだわる必要のない大学という場を使って、もっと自由にいろんなことについて考え、意見を戦わせ、協力する、そのような形で大学が産官学連携の中心となって社会に貢献していくことができればいいなと考えています。
企業等多方面からのお話いただく機会というこれまでより増えてきていますか。
サステナビリティ推進本部ができたということで、学外の皆さんにとっても上智大学のここにアプローチをすれば応えてもらえるのではないかが分かりやすくなり、お声がけいただくケースが増えてきていると思います。また、サステナビリティ推進本部の学生から学外の皆さんにアプローチをさせていただくというケースも増えてきているのかなと思います。
金融機関・りそな銀行に求めることは何でしょうか。
金融機関の大きな仕事は企業やお客さまの成長をサポートすること、あるいは、いろいろリスクのある社会の中で、どういう方向に向かっていったらいいのかということをいろいろ一緒に考えていくことだと思います。SDGsで言われているようなこと、例えば「人を大切にしないといけません」、あるいは「社会を大切にしないといけません」、「環境を大切にしないといけません」ということは、これからの社会において必須の視点で、それをおろそかにすると大きなリスクがあることだと思います。企業にせよ、個人にせよ、成長していく上では、その重要性をしっかりと理解し、実践していくことはすごく大事な部分だと思っています。幅広い顧客に寄り添って、それをサポートしてことができるというのは、金融機関ならではと思います。より客観的な立場から情報を提供したり、アドバイスをしたりしていける存在だと思いますので、ますます役割が大きくなると思っています。
<お話を伺って>
- 学生のSDGsへの関心が高まってきていることは、学生の様々な活動やSDGsをテーマとする履修科目が増えてきていることからも感じられる。
- 学生、企業、立場によってSDGsに関して様々な考え方があり、立場を超えて議論できる場があれば互いにプラスになるのではと考える。意見交換の場としてはインターンや就職活動における質疑応答の機会の充実、寄附講座提供などが考えられる。
- 産官学で連携していくことは重要。大学がハブの役割を果たし、金融機関はお客さまに伴走し情報提供・アドバイスをしていくことが重要と考えられる。
上智学院サステナビリティ推進本部 https://sophia-sdgs.jp/
学校法人上智学院はイエズス会を設立母体とする教育機関としての基本理念に、「人間の尊厳」を脅かす、「貧困、環境、教育、倫理」に関する社会課題の解決への貢献を掲げてきた。 これまで、様々なSDGs・サステナビリティにかかわる取り組みを進めてきたなか、各種取り組みを整理・発信し、各部署・学部/研究所・学生団体を有機的に連携させ、サステナビリティ活動をさらに強化・推進することを目的に、2021年7月にサステナビリティ推進本部を設立。
学校法人上智学院の学生職員に同様のインタビューを実施しましたのでぜひご覧ください。
【SDGsインタビュー】学校法人上智学院 学生のSDGsへの意識の高まりと就職活動における視点の変化について 〜学生職員編~
「過去のインタビュー記事一覧」はこちらよりご覧ください。
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。