製造業においてはSDGsへの取り組みについて認知が広まってきている印象だが、サービス業におけるSDGsへの取り組みについては頭を悩ませている企業が多い。SDGsという概念もなく、環境活動へ認知がまだまだ低かった2001年より環境活動を開始し、2011年にはホテル業初のエコ・ファースト企業に認定。サービス事業者でのSDGsへの取り組みのトップランナーである株式会社スーパーホテル山本会長に、取り組みのきっかけやサービス業が取り組むSDGsの意義についてお話を伺った。
SDGsへの取り組みを始めてからの変化・効果についてお聞かせください。
SDGsは私どもの経営理念「人を元気に地球を元気に」にばっちり合うということでずっと取り組みを続けています。当初お客さまの反応は、エコノミーをエコに振り替えているというような反応でした。だから言わずもがな、当初は全然付加価値が無かったです。2011年に環境大臣からエコ・ファースト企業と認定を受けた時から、時々お客さまより環境に良いことしているじゃないかと言ってもらうようになりました。それから2015年SDGsがパリ協定で決まり、そのあたりからちょっと様子が変わってきました。徐々に女性から、環境にSDGsに力を入れているから、スーパーホテルに泊まろうということでやって来ていただき始めました。旅行予約サイトの調査だと海外では80%がサステナブルホテルで泊まりたいというようで、それが日本でも7割近くはあるとのことですけど、まだそれは実感できてないですね。
ただ、スタッフの方がSDGsに真剣に取り組んでいる企業だから ぜひここに勤めたいとか、スタッフ募集ではものすごいプラスになっています。SDGsはいろいろな意味で、自分も気持ちがいいし、誇りを持って取り組めていると思います。スタッフみんなが各店舗で、地域を巻き込む、地域の企業を巻き込む、あるいは学生と共にSDGsの運動をやっていただいているというのは、非常にうれしいことです。
お客さまやビジネスパートナーへの影響はございましたか。
それは徐々に出てきましたね。豪華さとかデラックスさもあるけれども、きれいな空気、きれいな水とかSDGs、環境に良いということ、社会に良いことしているということに、非常に共感をいただける方が増えてまいりました。お褒めの言葉というのは、今までは私どものおもてなしに対するお褒めの言葉がほとんどだったんですけれども、今現在は月に環境やSDGsに対するお褒めの言葉が6,000通ほど来るようになりました。代表する言葉でいうと「きれいな空気、きれいな水、きれいな言葉、きれいなホテル、地球もこのようになったらいいですね」というようなお褒めの言葉をいただくようになってきました。
もう一つは、ビジネスパートナーの方がサステナブルということに対しての提言とか提案を持ち込まれる話が多いです。備品とか什器でもいろいろな意味でサステナブルな提案、意欲的な提案というものが増えてきています。
オーナーさんも、なかには賃料一辺倒という方もありますけれども、大体賃料も経済合理性で決まってくるわけですから、そうしたらあとは「御社は非常にロハスとか経営理念とかSDGsがしっかりしているから、御社に決めよう」というようなオーナーさんもおられます。
サプライヤー企業に求めるものをお聞かせください。
我々としては日本で一番のサステナブルホテルを作ろうということでやっていますので、コスト的な経済合理性もありますけれども、まず一番はやっぱりサステナブルを志向しているところと取引しようとしています。例えば各ホテルの木材は、その土地の木材を使っています。例えば金沢で能登檜葉を使うとかですね。それから、もちろん食材もオーガニックにこだわって、野菜もオーガニックです。オーガニックにこだわった食材を出すと、作る方も農薬を使わないし、お客さまの健康にも良いというようなことを志向してやっています。
中堅・中小企業がSDGsに取り組むにあたって意識すべきことについて教えてください。
ある程度事業というのは長期で考えないといけないということで、今儲かっているものでも社会に役立たない、環境に役立たないというものはいずれ滅びてしまうと思います。ですから、そういうものをやっぱり早く止めないといけないと思います。中長期に考えればどうしたってSDGsに沿わないと、事業自体がサステナビリティではないと思っています。問題は、サステナブルをやりながら帳尻が合うということ。サービスとか技術にどこか独自性がないとなかなか帳尻を合わせにくいと思います。独自性というのはそんなに難しいことではなく、今の仕事を四六時中同じことをするのではなく、少しずつ改善をしていくとそこに一つの新しい、誰もできない独自性を持つことができます。
社員の方は、やっぱりこのSDGsに取り組むことは非常にモチベーションが高いと思います。ビジネスモデルにSDGsに沿った独自性をちょっと入れれば帳尻は間違いなく合ってくるし、そういった独自性というものをすごく良しとしてくれる消費者は今たくさんおいでになります。やっぱり大量生産、大量消費の時代は終わったのですから、中堅・中小企業の腕の発揮どころだというふうに思います。
中堅・中小企業がSDGsに取り組む意義についてお聞かせください。
いろいろな意味で価値観が多様化してきていますから、全員の人に好まれるということは必要ないと思いますので中堅・中小企業の方が独自性とかこだわり性を出せるのではないかというふうに思います。やっぱり大企業でしたら、なかなか大きな所帯で回っているから、やりにくいところもありますよね。中堅・中小企業の方がスピーディー、これで行こうということになれば、割方皆の同意を得やすいと思います。
地域との連携の重要性についてお聞かせください。
例えば人口が5万人以下のところには、どこもホテル出さないんです。だけど私どもは江津(島根県)とか八幡浜(愛媛県)などに出しています。そこはやっぱり連携ですね。町をあげて、あるいは市をあげてこのホテルを歓迎するというような形でやってもらっていて、今そのホテルも全部稼働に乗って90%近く来ています。地元のお店に行っても「あそこに泊まってくれたの、よう来てくれたなぁ」と、それで他の町に泊まるなら私の町に泊まってと地元の人が一生懸命呼んでくれますし、役所の方も協力してくださいます。もちろん、工業出荷高とか人口とかいろいろそれも大切ですけれども、地元の方がどれだけ小さな市町村で一生懸命になっていただけるかということが一番必要ではないかというふうに思うんです。それが周りと一緒に連携して、独自性を出していくということだと思います。
今後SDGsの取り組みをどのように発展させていきたいですか。
サステナブルホテルというものを作り上げて、「ぐっすり休めて気持ちがよかった」と、「また行きたい」というそういうホテルを作りたいというふうに思っています。ですから、今やっているものをもっと深めていかないといけない。まず環境ということで、やっぱりきれいな空気、きれいな水、そしてぐっすり休める、そしてきれいな言葉、そういうホテルを深めていくということ。
それから2つ目はエコ・ファースト企業です。我々2050年度にはカーボンニュートラルを実現しないといけないわけですからね。ぜひ達成すべく我々としてはCO2削減をやっていきたいと思っています。
3つ目はやっぱり地域貢献だと思います。地域の方とどれだけ地域を活性化していくか。地方に行くと、グーっと人口が減っているところが多いですが、やはり住み続けられるまちづくりということですね。「ご当地結びスタ」というものを作りまして、地域のその観光とか飲食とか見どころをお客さまにいろいろとアピールしています。そして地域の方とも一緒になって、地域にまた行きたいなというものを作っていきたいです。
株式会社スーパーホテル https://www.superhotel.co.jp/
「Natural, Organic, Smart」をコンセプトとするスーパーホテルは、SDGsをテーマに持続可能なライフスタイルを提案するホテルを国内172店舗運営中。
きれいな空気や水、心を込めたおもてなしをはじめ、安心・安全で地球と人に優しいホテルサービスを提供しており、天然温泉や朝食ビュッフェのほか、自分好みのお酒作りを楽しめるウェルカムバーなどもご用意し、ホテルの多様な使い方を提案している。
株式会社スーパーホテル山本会長へのインタビューは上記記事の他にもございます。
こちらもぜひご覧ください。
【SDGsインタビュー】株式会社 スーパーホテル〜SDGsへの取り組み・経済価値と社会価値の両立について~
「過去のインタビュー記事一覧」はこちらよりご覧ください。
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。