人生100年時代を迎え、ライフプランニング(人生設計)の重要性はこれまで以上に増しています。老後の生活設計はもちろんですが、社会状況の変化が生き方を多様化させており、晩婚化やシングルライフなどさまざまなライフスタイルに対応した資金計画が求められます。また、特に若年層における貯蓄率の低さは、将来への不安を生み出す要因の1つです。
そこで企業が従業員へ積極的にライフプランニングについて啓蒙し、教育を行うことが必要になっています。退職金や年金制度の理解が進めば老後資金に対する従業員の安心感を醸成し、企業への愛着心も深まるでしょう。
今回は、従業員が年代別に考慮すべきライフプランニングの要素と、経営者として必要な心構えや制度設計についてご説明します。
若手には貯蓄や資産運用を推奨
金融広報中央委員会の調査(2022年)では、20代単身者の42.1%が貯蓄ゼロと回答しています(※1)。これでは結婚や住宅購入などのライフイベント、さらには入院や失業といった収入源が減るリスクに対応できません。新入社員や20代の転職入社組には給与の3か月分の貯蓄を目指すよう、給与天引きなどの制度を推奨し、貯蓄の基礎を築いてもらいましょう。
もし自己都合で退職した場合、失業手当が受け取れるのは手続きから2〜3か月後。この期間を乗り切るためにも、給与3か月分の貯蓄は不可欠です。
さらに、余剰資金ができた世代には、長期運用による資産形成を促しましょう。老後2,000万円問題が話題になって久しいですが、公的年金だけで老後資金のすべてを賄うことは現状では難しくなっています。もし企業型確定拠出年金(企業型DC)が導入済みであれば、若いうちからの資産形成の習慣化に有効です。
資産運用の経験を積むほど、従業員の金融リテラシー向上が期待できます。金融の知見やリスク管理に関する理解も深まり、ビジネスの現場における適切な判断を促進することになるでしょう。従業員のパフォーマンスが上がるとともに、企業価値の向上につながります。
40代以降は老後資金の「可視化」を
40代から50代の従業員に対しては、公的年金の支給額や支給開始年齢、退職金の算出方法、再雇用制度の内容などを把握してもらう機会を提供しましょう。これは、定年後の生活設計や資金計画を「可視化」し、自身の未来を意識することを促すためです。
また、この年代は家庭の教育費や住宅ローンなど大きな出費が重なるタイミングでもあります。そのため、これらの出費と老後資金の準備をバランスよく進める戦略的な資金計画が必要です。企業の制度を理解し、社会的制度と連携させることで、従業員が現在のライフイベントと未来の生活設計を同時に考えられる機会を設定しましょう。
そのためにも企業は自社の制度だけではなく、公的年金や税制といった、個々の従業員が自身のライフプランを描く際に必要な情報を提供することも大切です。
従業員の動機付けにはセミナーが効果的
ライフプランニングは自身の置かれている環境を見つめ直し、改善すべきポイントを理解する過程です。具体的なプランニングにより、従業員が自身の不安を軽減することに意味があります。
この意識付けを従業員に対して行うためには、投資教育の情報提供を定期的に行うことや、適切なタイミングでセミナーを開催することも効果的です。専門家に分かりやすく説明してもらうことで、従業員が理解を深める機会になるでしょう。りそな銀行もライフプランニングセミナーや投資教育などを行っておりますので、詳しくはご相談ください。
(※1)金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)2022年調査結果」
企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。