「拠出型」の企業年金、上場企業でも主流に

仕事を求めている人が会社を選ぶとき、充実した福利厚生は有力な選択肢になり得ます。
ここ数年、福利厚生制度として導入する企業が増えているものが、企業年金制度の一つ、企業型確定拠出年金(企業型DC)。企業が掛金を拠出し、年金に加入している従業員が自ら運用する制度です。従業員の老後の資産形成を企業が後押しし、従業員の会社への帰属意識や働くモチベーションを高めることにもつながります。

もし、最近自社に良い人材が集まらないと感じている場合、企業型DCの導入でライバルに後れを取っていることが一因かもしれません。実際、どのくらいの企業が企業型DCを導入しているのでしょうか。

毎年2,000~3,000社が加入

厚生労働省の調査(※)では企業型DC導入企業は2022年3月時点で約42,000社。前年から約3,500社増えており、右肩上がりの増加傾向が続いています。

企業型年金実施事業所数の推移

日本の企業年金で最も普及が進んでいるものは、給付額が約束されている確定給付型企業年金(DB)です。しかし運用が悪化すると企業負担が重くなるため、大企業でも企業型DCへの移行が進んでいます。また中小企業にとっても、これまでは制度設計や運用面で導入しにくい面がありましたが、何度も行われた法改正で改善が図られたことも導入への追い風になっているようです。

上場企業に絞って見てみると、全上場企業の企業型DC導入率は40%台半ば。大企業の多い東証プライム市場が60%台と高いのですが、同スタンダード市場でも4割近い数字です。中堅・中小企業にも導入が広がってきていることが読み取れます。

全体として導入に前向きな傾向

業種によって企業型DC導入の進み具合は違うのでしょうか。公表されている資料などから、導入状況を見ていきましょう。

先ほどお話しした全上場企業の導入率44.7%を大きく上回っているのが、電気・ガス業で70%台。鉱業や金融・保険業も60%に達しています。

製造業の導入率は5割を超えています。食料品から機械、金属加工など業種が広範なため、細かく分類すると導入状況に濃淡があるものの、全体としては導入が進んでいると言ってよいでしょう。建設業や、卸売業と小売業を合わせた商業も4割以上になっています。規模の大小を問わず導入に前向きな姿勢もうかがえます。

一方、運輸・情報通信業は30%台にとどまり、中でもソフトウェア開発や情報処理を含む情報・通信業は20%台。他業種と比べ比率が低いですが、それだけ今後の伸びが見込まれる業界と言えるかもしれません。

同業他社に遅れず企業型DC導入検討を

上場企業で企業型DCの導入が進んでいることがお分かりいただけたでしょうか。企業型DCは従業員に老後の安心をもたらし、人材確保の面でもライバル企業に負けない制度になり得ます。中堅・中小企業にとっても、企業価値を上げることにつながることは間違いありません。
まだ自社に企業年金制度がないのであれば、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

※ 厚生労働省 確定拠出年金制度「企業型年金の規約数の推移」(規約数、事業主数、企業型年金加入者数)

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年3月31日時点の内容となります。
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