CRE戦略の一環「セール&リースバック」という選択肢

大企業の活用例も次々登場

CRE(企業不動産)戦略には、さまざまな手段がありますが、今回はセール&リースバックをご紹介しましょう。これは、自社の保有不動産(本社ビルや工場、物流施設、店舗など)を第三者に売却、同物件の賃貸借(リースバック)契約を結び、引き続き同じ物件を活用できるようにする仕組みです。

最近のセール&リースバック取引の一部事例
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一昔前、本社ビルを売ってリースバックするといえば、周囲からは「よほど経営が苦しいのだろう」と思われるフシがありました。しかし近年では、トヨタ自動車やリクルートホールディングスなど、経営のしっかりした大企業が本社ビルのセール&リースバックを実施しています(表参照)。こうした事例が知られてきたこともあり、以前の「経営が傾いた会社のやること」というイメージは払拭されたと言って良いでしょう。CRE戦略の一環として、セール&リースバックを積極的に取り入れられる社会的環境が整ってきたのです。

セール&リースバックのメリットは?

セール&リースバックは、自社保有不動産を売却する、いわゆる流動化の一つの手法です。では、なぜ経営のしっかりした優良企業もセール&リースバックを活用するのでしょうか?キャッシュ(売却金額)が入ってくることで経営戦略策定の選択肢が増えるメリットがあるからです。

上場企業の場合、投資家は収益の成長性を重視することはもちろんですが、資産効率についても厳しい視線を注いでいます。事業用に使っている土地やビルは自社で持っていて当然、という考え方はもう過去のもの。「不動産を活用して、どう資産効率を上げ、企業価値を高めるか」が問われる時代となっているのです。

近年、優良企業のケースでは、「新規事業や研究開発に投資したい」「M&A資金に充当したい」といった動機が垣間見えます。また、「借入金の返済に回して、財務内容を向上させたい」というケースもあります。今後は上昇する可能性があるとはいえ、まだ日本の金利は世界的に見て低水準ですから、借入金で賄っても良いではないかという考え方もあるでしょう。しかし、あえて借入金に頼らず、自社保有不動産を活用して資金創出することで、投資家に対して「資産効率を考えている」という良いアピールになるのです。

また、店舗をたくさん持っている流通業などの場合、セール&リースバックはバランスシートを膨張させないために有効です。流通大手のイオンはイオンリートに商業施設や物流施設を組み入れ、J-REIT市場に上場して機関投資家や一般投資家が投資口を保有できるようにしていますが、これもセール&リースバックの一形態と言えるでしょう。

まずはしっかりとした経営戦略が必要

もっとも、売却した後でリースバックするわけですから、その後の賃料についてはしっかり計算に入れておく必要があります。得たキャッシュで投資をした事業から、賃料を上回る収益を上げられるような、「勝ちの戦略」を立てていきたいものです。

つまり、CRE戦略は不動産有効活用にとどまらず、経営戦略そのものなのです。

そもそも何の目的でセール&リースバックを行うのか、得たキャッシュは何に使い、どう会社を成長させていくのか。これらは不動産の有効活用にとどまらず、自社の経営戦略に関わる重要な話です。総務部門任せにせず、経営者自らが積極的に関与いただく必要があります。りそな銀行には、CRE戦略をサポートするチームのみならず、M&A戦略や事業戦略策定などの経営コンサルティングをご提供するチームもあり、お客さまを経営全般からサポートする体制を整えています。

また、今後は会計基準の変更なども予定されていますから、最新の情報のご提供にも努めてまいります。これまでは当たり前のように保有していた自社不動産が、会社の飛躍に役立つ可能性を秘めているかもしれません。ぜひ、お気軽に、お近くのりそな銀行の支店にご相談をいただければと思います。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年6月2日時点の内容となります。
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