- 事業承継の方法については、親族内承継と親族外承継があります。近年は、親族外に承継するケースが増加する傾向にあります。
- 企業オーナー・経営者へのアンケート等調査結果を踏まえ、事業承継の課題とM&A増加の背景に迫ります。
事業承継の現状
- 会社オーナーが事業承継を検討する場合、各種課題となる事項があります。日本商工会議所の調査結果(2021年3月5日公表資料)を参考に、昨今の会社オーナーの事業承継に関する想いについて考えます。
- 経営者年齢別の後継者の決定状況をみると、60歳代から後継者を決定する傾向にある一方で、60歳代の18.7%、70歳代の13%は、未だ後継者を決めていません。【資料1】
- 後継者への承継方法には、親族内承継・親族外承継があります。それぞれの課題について考えてみましょう。
- 事業承継にあたっての障害・課題として、「後継者への株式譲渡」、「後継者教育」等が挙げられています。特に、株式譲渡を行う際の障害については、「相続税・贈与税が高い」、「後継者に株式を買取る資金がない」との回答が多くなっています。
- この課題に対して、承継コストの軽減策として検討されているのが「事業承継税制(特例措置)」の活用です。ただし、この制度の活用に際しても「10年間の時限措置であり今後どうなるか不明」、「納税免除にならない可能性」、「納税猶予の取り消しリスクがある」といった制度の不確実性が活用の障壁となっている状況もうかがえます。
- また、そもそも親族内に後継者候補が不在の場合は、親族外承継を検討する事が一般的と思われます。【資料2】
- (株)東京商工リサーチの調査結果(2021年4月8日公表資料)によれば、休廃業のうち61.5%が黒字、後継者難による廃業が廃業理由の29%を占めています。今後、後継者不在が解消しなかった場合、黒字でありながら廃業に至ってしまうケースが増加する可能性もあり経営上の大きなリスクとなっています。
- そのような事態を避けるために、社内・外への事業承継(M&A、MBO、EBO)が検討できます。
後継者選びの現状
- (株)帝国データバンクの公表によると、2022年の「同族承継」の割合は、34.0%と最も高くなっています。しかし、前年からは4.7pt下落しており、「同族承継」による事業承継割合は急減傾向にあります。
- 血族関係によらない役員などを登用した「内部昇格」は33.9%と、同族承継に迫る勢いとなってきています。
- また、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合は20.3%と、調査開始以降で初めて20%を超えました。
- 一方、同じ親族外の承継でも社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」は7.5%、「創業者」は4.3%にとどまっています。
- 事業承継は脱ファミリーの動きが鮮明となっているものの、第三者承継は自社社員かM&Aなど他社との吸収・合併によるものに二極化しています。【資料3】
M&A検討の障壁
①「M&Aは大企業同士で行うもの」という誤解
以前は、「自社の会社規模ではM&Aの対象とならない」と思われがちでしたが、日本商工会議所のアンケートによると買い手となる会社の従業員数が300名超の企業でも約4割は小規模企業を買収しています。【資料4】
⇒後継者難が深刻化している小規模企業(従業員20名以下)の買収事例は多く、後継者不在企業の事業継続の受け皿となっています。
②「M&Aに対するイメージがよくない」という誤解
東京商工リサーチが行ったアンケートによると、M&Aに対するイメージの変化について、「プラスのイメージになった」が「マイナスのイメージになった」を大きく上回り、この10年間で向上してきていることがわかります。【資料5】
このように中小企業のM&Aは、後継者不在に直面したオーナー経営者の後継者の課題を解決するための有力な選択肢として、今日では一般的に定着しています。また、日本社会を取り巻く環境の変化により、M&Aは活発に行われており、りそなでも数多くのご相談を承っております。是非、ご相談ください。
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監修日:2023年8月1日現在
事業承継について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。