不動産レポート2024年春(首都圏版)

3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2024年春に発行された、首都圏向けの内容となります。

【Market REVIEW】 日銀は金融政策正常化の道筋を明確化することが期待される

  • りそなアセットマネジメントチーフストラテジスト 下出 衛
    不動産投資関係者にとって足元もっとも関心が高い事柄は「日銀の金融政策」と思われます。マイナス金利が解除された3月の金融政策決定会合では、声明文で「当面、緩和的な金融環境が維持されると考えている」と明記され、日銀は慎重に正常化を進めると市場は解釈しました。然し、4月中旬より米国金利の上昇を受け円安が一段と進んだことから、日銀は何らかの政策対応を迫られるとの見方が広まります。ところが、次の4月会合では、政策変更は一切見送られ、一時1ドル=160円超まで円安が進行します。その後、当局の介入や米金利がやや低下したことから、ドル円は小康状態にあります。ただ、対ユーロでは1999年のユーロ発足来の安値を付けるなど円安基調は変わっていません。5月に入り、植田総裁からは国会答弁や講演を通じて追加利上げに前向きともとれるメッセージが発信されています。更に、日銀は5月13日の定例国債買い入れオペで長期国債の買い入れ額を500億円減額しました。市場では、政策変更を巡る不透明感が強まり、10年国債利回りは11年ぶりに1%を上回りました。
  • 「中立金利」を巡る議論を深めることが、不透明感を軽減する一助になると考えられます。「中立金利」とは、文字通り、景気を過熱も冷やしもしない中立的な金利水準を指し、日銀が目指す利上げの最終到達点の目安になると考えられます。米国では、FOMCメンバーによる政策金利の長期見通し(中央値)が名目中立金利に近似との認識が市場では広く共有されています(3月FOMC時点では2.6%)。4月の日銀展望レポートでは6つの実質中立金利の試算が紹介されており、概ね▲1.0%〜0.5%のレンジであることが示されています。これに2%インフレを足すと、名目ベースの「中立金利」は1.0%〜2.5%となります。4月の会見で植田総裁は、中立金利は幅をもってみる必要があると断りつつも、今後分析を深める意向を示されており、具体的な議論の進展が期待されます。

 (りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)

 投資姿勢は現状維持が増加

  • 三井住友トラスト基礎研究所によると、機関投資家の投資方針として「現状の投資額を維持する予定」と回答した割合が50%と半数を占めました。一方、「投資を増やす」・「投資を減らす」の回答割合は減少し、金利上昇の局面に入ったことなどから様子をうかがう方針への転換が多くなったことがわかります。
  • ニッセイ基礎研究所、MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスによると、2023年の国内不動産取引総額は前年比▲13.0%と市場の減速傾向が強まったとしており、経済環境の変化から落ち着きが見られていることが考えられます。
機関投資家による今後の不動産投資方針
(出所)三井住友トラスト基礎研究所(2023.11月~12月調査)

 インバウンドの増加で店舗賃料・出店意欲が増加

  • 日本不動産研究所、ビーエーシー・アーバンプロジェクトによると、インバウンド人気の高いエリアや店舗で1F賃料は上昇しています。物価高騰により、国内中間層によるラグジュアリーブランドへの消費は落ち着きがみられるものの、円安などからインバウンド旅行客による消費が増加しており、ラグジュアリーブランドの出店対象となるストリートでは出店意欲も高まっているとしています。
エリア別1階店舗賃料の推移(円/坪・月)
(出所)日本不動産研究所、ビーエーシー・アーバンプロジェクト

都心部などで価格・賃料は上昇が継続

  • 東京カンテイによると、東京都区部の70㎡あたり中古マンションの平均価格は、2024年3月では7,242万円(前年同月比+2.96%)と上昇が継続しています。割安感が強い千葉市でも上昇傾向にあるものの、さいたま市と横浜市では下落・横ばい傾向となっており、首都圏全体でも下落傾向にあります。分譲マンション賃料についても、東京23区では6ヶ月連続で上昇しており、横浜市や千葉市でも上昇傾向にあります。
  • 不動産経済研究所によると、2023年度の首都圏の新築分譲マンション平均価格は7,566万円(前期比+9.5%)と3期連続での上昇となり、最高値も更新しました。都心部での高額物件の供給が増加したことや建築費・用地取得費が高騰したことなどが要因となっています。
首都圏の中古マンション70㎡価格
(出所)東京カンテイ

オフィス空室率は概ね改善傾向

  • 三幸エステートによると、東京都区部の2024年4月の平均空室率は4.64%(前月比±0ポイント)と横ばいになっています。新規供給の中心となっている大規模ビル(基準階面積200坪以上)では前月までは低下傾向にありましたが、足元では4.53%(同+0.02ポイント)とわずかに上昇しているものの、目安となる5%を下回っています。平均募集賃料は19,143円/坪(同▲43円/坪)と前月からはわずかに下落していますが、トレンドをみると上昇傾向にあります。
  • 大量供給による大型・中型ビルの2次空室は、現状ではそこまであらわれておらず、大規模ビルの空室率も低下傾向にあり、市況は堅調に推移しています。
東京都区部のオフィス空室率
(出所)三幸エステート

【Market TOPICS】東京圏の地価公示

東京圏の対前年変動率の推移
(出所)国土交通省
東京圏の対前年変動率上位・下位順位表
(出所)国土交通省

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年6月28日時点の内容となります。
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