部下指導のテクニック、ティーチングとコーチング

従業員の教育やスキルアップの話をするときに、何かと話題に上るようになった「コーチング」という言葉。従業員の成長に大いに寄与するということで注目されています。
同義として使われがちな「ティーチング」との違いや、実際にコーチングを実践する際のポイントについてご紹介します。

ティーチングとは

ティーチングについては、従来の社員教育として馴染み深いものではないでしょうか。
師匠と弟子、先生と生徒のような関係でものを教える教育のことをティーチングといい、教育対象が何も知らないゼロの状態から、基本を学ぶ教育に適したやり方です。

コーチングとは

対して「自主的な成長による目標達成を促す」ように指導をしていくのがコーチングです。指導する役割と指導される役割があるものの、いわゆる先生と生徒のような関係にはありません。これがティーチングとの最大の違いです。対話を通じての自身の才能や特性の把握、自ら立てた目標を遂行する自主性の強化、そしてこれまでの振り返りから新しい発想を得るといった効果が期待できます。基本を教わる段階を終え、次なる成長を期待する段階に有効な方法といえます。

コーチングには国際コーチ連盟や日本コーチ連盟が認定する民間資格があり、指導者として高度な技能を求められます。
基本姿勢であり守るべき3原則、「インタラクティブ(双方向)」「テーラーメイド(個別対応)」「オンゴーイング(継続性)」を守り、「傾聴」「質問」「承認」といったスキルを持つこと。どれひとつ欠けてもコーチングは成立しなくなります。
では、コーチングを構成するこれらの原則について詳しく見ていきましょう。

インタラクティブ(双方向)

指導役と指導を受ける側が対等な立場でコミュニケーションをとることが、インタラクティブと呼ばれるコーチングの原則のひとつです。
これは双方向のコミュニケーションであり、どちらかが一方通行になってはいけません。相手の発言の是非を問うたり、アドバイスをするというのも一方通行に含まれます。
対等な立場で対話をし、受け側の話を傾聴し、「〜で失敗した理由はなんだと思う?」「今回、障害になったのは何だったの?」など問題点を論理的に導き出す質問で、受け側が自ら課題を認識するような、効果的な気づきを起こします。その課題と目標を承認することが有効なコーチングの手段です。

テーラーメイド(個別対応)

スーツを仕立てるように個人個人に合わせた個別の対応をすること、すなわちテーラーメイドも原則のひとつです。
指導を行うときは、過去の経験から「**の場合は○○だったから」と別人でうまくいったパターンを適用しようとしてしまいがちですが、コーチングではそう考えた時点で失敗です。
コーチングを受ける側の目標や達成方法は個別でまったく違うものであり、また個人的な資質もそれぞれ違います。そのため、コーチングを受ける側に即した対応をしなければいけません。
あくまで個人に合わせた対応を考え、促す姿勢を徹底しましょう。

オンゴーイング(継続性)

こちらの原則は、字面から想像がしやすいかもしれません。コーチングは自発的な行動と成長を促すものですから、一度で済むことはまずありません。目標達成のための行動と考え方を継続できるよう、コーチングも継続していく必要があります。
継続して関わっていく中で、指導役も受け側に対して理解が深まっていくので、状況の変化に合わせた個別対応がより的確に行えるようになるでしょう。

このように、「双方向」の対話を、受け側に合わせた「個別対応」で、「継続性」をもって行うことで、コーチングははじめて機能するものです。
成長を促すという特性上、結果が出るまでの期間は長く、地道に継続する必要があります。手早く目に見えた効果が出にくいというのはコーチングのデメリットではありますが、そのぶん成功した場合には、自主的に動くことができて遂行能力も高い人材を育て上げられるという大きなメリットがあります。

コーチングは簡単ではない?

対話により目標を自覚し、目標達成のための成長を促すのがコーチングですが、実行はなかなか難しいもの。実行時に気をつけたい、陥りがちなコーチングの失敗例と言うべきものも存在します。

  • 質問ではなく詰問になってしまう
    →質問の内容が、whatではなく具体的かつ限定的な内容になるケース。「傾聴」「質問」ができていない。
  • 受け側本人ではなく、指導役が望む目標が出るまで誘導をしてしまう
    →質問はwhat(何を?)だが、指導役が望む答えが出るまで否定で応えるケース。「傾聴」「承認」ができていない。

こういったことはコーチング失敗にありがちで、結果として実現不可能な目標を立てさせてしまい、コーチングの受け側を潰してしまった……ということも珍しくありません。
地道に時間をかけて、根気強く行うのがコーチングの要です。


コーチングについての概要と注意点をご紹介してきましたが、いかがでしたか?
未経験者や初心者への基本指導はティーチングで、ある程度以上からさらなる伸びを期待するときにはコーチングでと、高度なスキルを持った人材を育成するには使い分けが重要です。
コーチングを含めた新様式の教育を取り入れて、既存人材の強化、事業のさらなる飛躍へとつなげていきましょう。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年3月15日時点の内容となります。
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