離職率を下げるための有効な方法は?

帝国データバンクの調査(※1)によると、「人手不足倒産」の件数は2013年度以降右肩上がりで増えていましたが、新型コロナウィルスの影響もあり、2020、2021年度は2017年度並みに減少。しかしその後増加し、2023年度には313件と、過去最多かつ2022年度の2倍にも上りました。人手不足倒産を防ぐには、新規採用に力を入れることはもちろんですが、何よりもまずは現在の従業員の早期離職を防ぎ、長く活躍してもらえる環境を整えることが重要です。では、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?

従業員はなぜ離職するのか

そもそも、離職者はどんな理由で会社を辞めているのでしょうか。厚生労働省の「令和4年(2022年)雇用動向調査」(※2)を見てみましょう。
最も多い理由は男女ともに「定年・契約期間の満了」で、男性15.2%、女性10.9%と突出しています。次に多いのは個人的理由のうち「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が男性9.1%、女性10.8%。さらに「職場の人間関係が好ましくなかった」ことが男性8.3%、女性10.4%と続きます。

その他、「会社の将来が不安だった」「給料等収入が少なかった」といった理由が上位に並んでいます。そうした不満や不安が従業員の早期離職につながっていることがよくわかります。

転職入職者が前職を辞めた理由割合

もう少し細かく見ていくと、「仕事の内容に興味を持てなかった」「能力・個性・資格を生かせなかった」という回答も一定数あります。自身の働きを認めてもらえているか・キャリアアップができているか。一言で言うと「仕事にやりがいがあるかどうか」を従業員が重視していると読み取れるでしょう。

従業員個人の適性を見極めつつ、働きやすくやりがいのある職場を作ることが会社には求められていると言えます。

会社への不満や不安を解消するには?

従業員が長く働き続けてくれる会社にするには、早期離職に結びつく上記のような従業員の不満や不安を解消していくことが重要です。

給与については、簡単に上げられるものではないかもしれません。しかし人事評価制度を整備し、人事評価と給与を連動させるなど昇給の基準を「見える化」して、「頑張れば収入が上がる」という意識が浸透すれば従業員のモチベーションアップにつながります。また退職金制度の整備など、福利厚生の充実を図ることを検討するのもよいでしょう。

労働条件の改善については、長時間労働の是正、有給休暇取得の推進など、政府が進める「働き方改革」の内容に沿って現状を見直しましょう。人手不足で現状の改善が難しいようであれば、システム導入等による業務の効率化やアウトソーシングなど、従業員の負担を軽減する手立てを広く検討すべきでしょう。

会社の将来への不安を払拭するには、中長期の経営ビジョンを策定し、社長から発信するようにしましょう。経営陣やマネージャー層も内容を十分に理解し、日常業務の中で従業員に都度伝えていくとともに、計画の進捗や新たな課題なども共有してより深い浸透を図ります。そうすることで会社の将来がイメージできるようになり、従業員の不安も軽減していくことが期待できます。

また、60歳前後で定年を迎えたもののまだまだ活躍してもらえるスキルを持った人も多くいます。各種法改正による高年齢者雇用確保措置も義務化されており(※3)、より長期的な目線での人材確保と業務・制度改革が必要となりそうです。

少子高齢化時代を勝ち抜く

従業員は直接、会社に対する不満や不安を口にすることはないかもしれません。しかし、普段の会話や業務でのやりとりから気づくことがあるはずです。できることから少しずつ改善してみませんか?

日本では今後も少子高齢化が進むことで、ますます人材獲得競争が厳しくなっていきます。そうした中にあって、従業員が働きやすく、働きがいの感じられる会社を作ることこそ、離職率を下げ、ひいては会社の成長発展につながる有効な対策となるでしょう。

※1 帝国データバンク「全国企業倒産集計 2023年度報」
※2 厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」
※3 厚生労働省「高年齢者の雇用」

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年8月26日時点の内容となります。
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