iDeCo+をベンチャー経営に有効活用しよう!

ベンチャー企業をはじめとする新興企業は、将来性や、大企業にはないオープンな社風が特徴です。一方、給与や福利厚生に関する制度が大企業ほど整っていないところも多く、優秀な人材の採用・定着に悩まれている経営者もいるでしょう。

中堅以上の企業は退職一時金に加え企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入するなど、福利厚生を充実させることができます。一方、ベンチャー企業や中小企業では経営資源の問題や事務負担を考えるとハードルが高いといえます。

この悩みを解決する手法の一つがiDeCo+(イデコプラス)の導入です。従業員の老後の資産形成をローコストでサポートすることが可能で、採用活動時には福利厚生制度としてもアピールできます。企業にも従業員にもメリットが多いiDeCo+の内容を詳しく見ていきましょう。

iDeCo+(中小事業主掛金制度)とは

従業員が自分で掛金を積み立て運用する年金をiDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)と呼びますが、iDeCo+は、この掛金に企業が上乗せして拠出する制度です。従業員から見れば、老後資金の積み立てを全額自分で行わなければいけないところ、一部を企業に負担してもらえる仕組みです。

iDeCo+掛金納付方法イメージ
iDeCo+掛金上乗せイメージ

従業員は自分が拠出したと掛金と企業が上乗せ拠出した掛金(事業主掛金)をあわせて管理・運用します。金額は月額合計5,000円以上23,000円以下の範囲に収まるように、従業員と企業が1,000円単位で決定します。一般的に事業主掛金は対象者全員が同額になるように設定しますが、従業員の職種や勤続期間に応じて変えることも可能です。

導入するためにはいくつか条件があります。従業員数が300人以下である、企業年金(企業型DC、確定給付企業年金、厚生年金基金)を導入していない、などです。

2018年5月にスタートしたiDeCo+は導入する企業が順調に増えており、国民年金基金連合会によると2021年3月末現在で2,687社が導入。加入者数も17,000人余りに上り、今後ますます増えると見られています(※1)

iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)の実施事業主数・加入者の推移

iDeCo+のメリット

企業にとってiDeCo+は、次のようなメリットがあります。

導入しやすい福利厚生制度

制度設計が煩雑な企業型DCと比べ、iDeCo+は従業員のiDeCoに上乗せするだけ。従業員の掛金を増やすことで簡単に福利厚生を充実させられるのです。導入の事務手続きが簡単であることも見逃せません。人手が限られるベンチャー企業や中小企業にとって、業務に支障を及ぼすことなく導入を進めやすい制度と言えそうです。

人材定着・人材確保への寄与

企業が従業員の年金を補助する制度は、誰にとってもうれしく感じるはず。福利厚生が充実していることを対外的にアピールできるので、新たな人材確保につながります。従業員のモチベーション向上も期待できるため、優秀な人材の離職リスクを減らすことができます。
また、iDeCo加入者が転職する場合、転職先企業にiDeCo+があれば大きな魅力と映るでしょう。iDeCo+はポータビリティが確保されており、中途採用が多い企業にも適しています。

コスト抑制・節税効果

事業主掛金は企業型DCと同様、全額損金に算入できるので、退職時に退職金を一括で支払う場合と比較して、税制メリットを受けながら負担を平準化できます。一方で、企業型DCとは異なり、制度導入時のコストはかからず、口座管理手数料も加入している従業員の負担となるので、企業側のコストは事業主掛金部分だけになります。


ベンチャー企業は経営や組織に不安定な部分がありますが、経営者が従業員のことを考えていると示すことが企業の成長にとって大切です。iDeCo+は企業の経営規模や従業員の働き方に応じて柔軟に掛金を設定でき、経営者が従業員への思いを制度として形にできる仕組みです。

iDeCo+は従業員への説明や従業員代表者の同意手続きが必要ですが、まずは従業員がiDeCoに加入する必要があります。従業員のiDeCo加入については、りそな銀行などiDeCoを取り扱っている金融機関のサポートを受けるのが良いでしょう。

iDeCo+導入の流れについてはこちらの漫画もご覧ください。

※1 りそな年金研究所「企業年金ノート」No.639(2021年7月)

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年7月22日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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