創業メンバーの退職トラブルを回避するには?

会社の創業時から苦楽を共にし、信頼してきた幹部や社員からの退職の申し入れは、経営者にとっては大きな心痛かもしれません。しかし場当たり的、感情的に対処してしまっては、トラブルの原因にもなりかねません。まずはよく話し合い、結果として袂を分かつことになったとしても、次のステージに向けてベストの選択を模索する。そんな未来志向の対応を心がけましょう。

創業メンバーはなぜ辞めるのか?

◆まずは退職理由を知る

退職の申し入れを受けたら、まず行いたいのは退職理由を明確にすることです。家庭の事情などやむを得ない場合はさておき、創業メンバーが退職を考える背景にはいくつかのパターンがあるように思われます。例えば、

  • 創業フェーズを終え、自分のミッションが達成された
  • 事業の方向性が創業時と変わってしまった
  • 変化のスピードについていけない
  • メンバーの価値観の変化

などです。

◆真の理由はどこにあるのか

退職の理由が、「新たなチャレンジをしたい」と「経営方針に納得がいかない」、「処遇に不満がある」では、対処の仕方もかなり変わってきます。まずはメンバーとよく話し合い、退職理由を明確にしましょう。最初はなかなか本音を語ってもらえないかもしれませんが、腹を割って話せる環境を整え、真の退職理由を聞かせてもらえるよう努めてください。

やるべきこと、やってはいけないこと

◆辞めずに解決する道を模索する

次に、そのメンバーを失いたくない人材と考えるのであれば、評価や期待をあらためて伝えた上で、翻意できないか試みましょう。本人の希望の実現や不満の解消が社内で可能なのであれば、条件を伝えた上で解決策を提示しましょう。単に「自分が期待されているのかどうかわからず不安」といった理由もないことではありませんから、まずはしっかりとしたコミュニケーションを心がけてください。

◆場当たり的、感情的な対応は厳禁

ここで注意したいのは、場当たり的、感情的な対応をしてしまうことです。安易に昇給や昇進で慰留するのは、「今までの評価は何だったのか」とかえって信頼を失うことにもなりかねませんし、社内的にも悪い前例を残してしまうことになります。また、あまりに強引な引き止めなども決して良い結果を生みませんし、大きなトラブルに発展することもありますから絶対にやめましょう。

トラブルを回避するために

◆メンバーの次のチャレンジを応援する

結果として退職することになったとしても、本人の意思を尊重し、極力温かく送り出してあげましょう。ビジネス的な視点で見れば、いずれビジネスパートナーになったり、再転職で「出戻り入社」ということもあり得ます。また、経営者が退職者をどう処遇するかは、他の社員にとってモチベーションにかかわる重大な関心事でもあります。メンバーの新たなチャレンジを応援し、その門出を祝福しましょう。

◆会社のリソースを守る

退職者の中には、同業他社への転職や同業種での起業というケースもあるでしょう。職業選択の自由を制限するのには限界がありますが、やはりライバルとなる以上、会社のリソースは守らなくてはなりません。顧客情報の持ち出しや顧客の引き抜きをしない等、範囲を決めて誓約書にサインしてもらうなど、可能な限り手を打っておきましょう。

退職の連鎖を防ぐために

◆待遇・制度を見直してみる

仮に退職を引き止められなかったとしても、こうした機会に創業メンバーの本音を聞けることは、会社の運営を改善する大きなチャンスにもなります。メンバーの希望や不満を吸い上げるコミュニケーション体制は整っているか、人事考課や待遇面で不備はないか、しっかりと機能しているかなど、あらためて見直して、より「ES(従業員満足度)の高い会社」を目指してください。

◆事業の方向性と現状を共有する

創業から時間が経つにつれ、事業の方向性や進展に変化が出てくることもあるでしょう。そうした変化は、ともすればネガティブに捉えられ、社内に不安を与えてしまうことにもなりかねません。できれば定期的に事業の方向性とそのときどきの状況を確認し、メンバーとも共有することで、社内の安心感・一体感の醸成を図りましょう。

多様な人材が活躍できる組織へ

創業後に中途入社してきたメンバーが退職を考える場合は、創業メンバーとは傾向が違って待遇や組織風土、人間関係といった理由が多いかもしれません。しかし基本的な対応については、創業メンバーの退職の場合と同様です。退職を考えるに至った理由は何か、モチベーションの低下が原因であったとすればそれは何で、どうすれば解決できたのかを明確にし、対応すべきものは対応しましょう。

創業以来の仲間や貴重な戦力に会社を去られるのは寂しいことかもしれませんが、そうした機会を事業上のリスクや組織のあり方を見直す一つのチャンスと捉え、多様な人材がより意欲的に働ける組織づくりに活かしてみてはいかがでしょうか。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年6月10日時点の内容となります。
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