世代ごとの価値観や行動は、他の世代から見ると「自分とは常識がまったく違う」と感じられるもの。自社の従業員との円滑なコミュニケーションに、世代ごとの特徴を理解しておくことは企業として欠かせません。世代ごとに育ってきた背景は異なるため、価値観や求めるものも同様に異なるものです。対応を誤れば従業員の退職や企業価値の低下を招く可能性も出てくるかもしれません。
そこで今回注目するのは、Z世代の新入社員。コロナ禍とコロナ後では、Z世代の中でも働き方の価値観に変化が起きているようです。
Z世代とは
日本では1997年から2012年生まれの世代を指す場合が多く、ミレニアル世代の次の世代であるため、ポストミレニアル世代とも呼ばれています。個人主義傾向が強く、デジタルネイティブ、ソーシャルネイティブであり、インターネットやSNSの存在が生活の前提になっている世代である、とも言われています。
その捉え方には諸説ありますが、大事なのは、コロナ禍とコロナ後の急激な変化が入社前後の時期に重なった世代であること。JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)の調査結果(※1)から、彼らが仕事に対してどう考えているかを紐解いていきましょう。
働く環境について
コロナの流行による緊急事態宣言下、調査対象者が所属するうち50%超の企業が在宅でのテレワークをメインとし、出社は必要最低限を目指して勤務形態を急激に変化させていきました。これに伴い、新人でも自宅勤務をするケースが増加していましたが、2024年の調査時点では「主な勤務先」に対する回答が、在宅30%、オフィス70%と、コロナ以前の体制に戻りつつあります。
ここで特筆すべきは「この1年間で、上司・先輩・同僚などとの関係性(精神的な距離)は近づいた」と回答した割合は、24年入社の従業員で70%超となっていることです。これは、20年入社の回答と比較すると27.1%増加しており、他の質問に関しても、おおむね出社して仕事をすることにポジティブな結果が出ています。
課題と感じていることについて、オフィスをメインとする回答者は仕事経験を通じた悩みが上位に。また、在宅をメインとする回答者では、オフィスメインの回答と同様の課題を感じていることに加えて、人間関係が希薄なことに起因する課題が上位に来ています。
この結果を見ると、勤務形態が在宅中心となっている企業では特に新人のフォローを意識すべきかもしれません。
働き方とキャリア観について
ステレオタイプ的には安定志向が強いと言われるZ世代。近年の調査では就社志向が高まっており、「現在の会社でずっと働き続けたい」と回答した割合が60%超となっています。また、調査結果からは他世代と比較すると失敗を恐れ、前向きな一歩を踏み出しきれない傾向があります。これは、成功する見込みが大きい安定択を好みつつ、自身を過大評価しない慎重な人物が多いということでもあります。また、管理職への昇進を志向する割合自体は50%を超えており、「その世代だから挑戦をしない」というわけではありません。
こうした結果から、新人教育で重視すべき点が見えてきます。
「失敗を恐れ」「慎重である」「行動や言動に自信がない」といった点を解消するには、成功体験の積み重ねが重要となります。短期的な目標を立て、成功のステップアップを繰り返していくことで、自身の能力や判断軸にも自信が持てるよう成長を促す、といった教育施策が有効です。また、短期的であることから個々の目標へのプロセスの評価をしやすくもなり、個人の適性や課題といった部分が見つけやすくなるといった、教育を行う側へのメリットもあります。
適切な評価と肯定的なフィードバックによって、「次の挑戦へ、また次の挑戦へ」と後押ししていける環境づくりが大切です。
ここまでZ世代の特徴と仕事への意識変化をご紹介してきました。全体的な数を見ると世代の傾向が掴めるのは事実ですが、当然ながら個々の職場では各個人の特性を見極めることが大事です。それでも、世代の主な傾向とその背景を理解することは、従業員個人への理解の一助となり、無駄にはなりません。Z世代がこれからの経済活動の中心を担っていくことは明らかであり、これに対応するためにも世代間の違いを理解することは企業にとって不可欠ではないでしょうか。常に「次の世代」への理解を怠らないようにしていきましょう。
