いま、企業の資金調達の世界ではお金に『色』がつきはじめています。
この『色』とは、サステナブルな社会の実現に向けた資金の流れをつくっていくということ。大手企業が次々とSDGsへの対応を実施・公開するなど、サステナビリティへ貢献する機運はビジネスの世界でも高まっています。サプライチェーンに属する中堅・中小企業も対応をしていく必要がありますが、実施のために資金調達を考えている企業も多いでしょう。
そこで今後、有効な『色』つきの資金調達形態として浸透しつつある、「サステナブルファイナンス」をご紹介します。
サステナブルファイナンスとは
サステナブルファイナンスとは、環境・社会課題の解決に取り組む企業等に、必要となる資金を金融機関が融資や投資でサポートするファイナンスのことを言います。
例えば、環境課題や社会課題の解決に対する事業・プロジェクト等への融資、あるいは自社の事業戦略をサステナブルな方向にシフトし、具体的な取り組みを掲げている企業へ投・融資することなどがあげられます。
企業の具体的な資金調達の形態としては「グリーンローン」「ソーシャルローン」「サステナビリティローン」「サステナビリティ・リンク・ローン」「トランジションローン」などに分けられます。融資ではなく社債調達の場合は「ローン」の部分を「ボンド」に置き換えて、名称が区別されています。では、それぞれの特徴について見ていきましょう。
サステナブルファイナンスの種類・特徴
種別 | グリーンローン/ボンド | ソーシャルローン/ボンド | サステナビリティローン/ボンド | サステナビリティ・リンク・ローン/ボンド | トランジションローン/ボンド |
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理念 | 地球温暖化をはじめとする 環境問題の解決 |
衛生・福祉・教育などの 社会課題の解決 |
環境問題および社会課題の 解決 |
企業のサステナビリティ活動 における目標達成 |
低炭素社会への移行 |
特徴 | 資金使途特定型 | 資金使途特定型 | 資金使途特定型 | 目標設定型 | 賃金使途特定型 or 目標設定型 |
主な基準 |
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主な資金用途 |
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その他 |
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グリーンローン/ボンドとは
調達資金の使途を、グリーンプロジェクトと呼ばれる地球温暖化をはじめとした環境・気候変動問題の解決に資する事業に限定するものです。
ICMA(注1)の定める「グリーンボンド原則」(注2)を基準として発行されるもので、国内向けに環境省でガイドライン(※)が制定されています。
再生可能エネルギー事業や生物多様性の保全事業、環境負荷の少ないクリーンな交通や気候変動への対応などの事業が主な資金使途とされます。使途の適格性をステークホルダーに示すために、指針に準拠している旨の外部認証を取得することが一般的な対応とされています。
注1 ICMA:国際資本市場協会(International Capital Market Association)。国際債券市場に関する国際団体。世界60カ国、500以上の会員で構成されている。
注2 グリーンボンド原則:2014年1月に策定された、グリーンボンド発行に関してグリーンボンドの透明性の確保、情報開示及びレポーティングを推奨し、市場の秩序を促進させるための自主的ガイドライン。逐次、改訂がされている。
ソーシャルローン/ボンドとは
調達資金の使途を、衛生・福祉・教育などの社会的課題解決に向けたプロジェクトに使用することに限定するものです。
ICMAの定める「ソーシャルボンド原則」を主な基準とし、資金の使用目的は、手ごろな価格での基本的インフラ・住宅提供事業、健康・教育など必要不可欠なサービス提供、食の供給や雇用創出、社会的な経済向上や自立援助など、特定の社会問題に関する対処・軽減等を意図する事業用途に限られます。こちらもグリーンローン/ボンド同様、指針に準拠している旨の外部認証を取得することが一般的な対応とされています。
サステナビリティローン/ボンドとは
グリーンローン/ボンドは環境課題、ソーシャルローン/ボンドは社会課題解決のためのプロジェクトに使途が限られるのに対し、こちらはグリーン・ソーシャル双方に配慮した事業へ用途を限定するものになります。
ICMAの「サステナビリティボンド指針」に沿った調達手段です。
例として、環境負荷の少ない基本的インフラを提供する事業などは、グリーン・ソーシャル双方の目的を含むものになるので、サステナビリティローンの対象となります。
サステナビリティ・リンク・ローン/ボンドとは
企業のサステナビリティ活動における目標達成を促すもので、IMCAの「サステナビリティ・リンク・ローン原則」に従い環境省でガイドラインが制定されています(※1)。
こちらは目標設定型の資金調達手段であり、グリーン・ソーシャルボンド/ローンのように使途自体が厳しく限定されないのが特徴です。目標とするKPIに対してSPTs(注3)を設定し、その達成度合いに応じて利用条件が変動するものが多く、比較的好条件で資金を調達できる可能性があります。
注3 SPTs(ステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット):環境・社会・経済に対する企業のサステナビリティ戦略とそれに整合した目標のこと。
トランジションローン/ボンドとは
気候変動への対策を検討している企業が、脱炭素社会の実現に向けて、長期的な戦略に則った温室効果ガス削減の取り組みを行っている場合に、その取り組みを支援することを目的としたものです。IMCAの「トランジション・ファイナンス・ガイドブック」で開示されている4要素を満たすことが条件で、資金使途特定の有無を問わない資金調達方法となります。
要素1:資金調達者のクライメート・トランジション戦略とガバナンス
(金融庁・経済産業省・環境省 トランジション・ファイナンスの定義より)
要素2:ビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティ
要素3:科学的根拠のあるクライメート・トランジション戦略(目標と経路を含む)
要素4:実施の透明性
サステナブルファイナンスの利用で生まれるメリット
SDGs対応のための目標を一般に公開し実行するなど、持続可能な社会づくりに向けた企業姿勢を示すことは企業イメージの良化につながります。加えて、サステナブルファイナンスを利用することで、資金調達段階から外部認証機関や銀行など第三者の知見を得られます。また、自社の立てる目標や取り組みがSDGsの潮流に沿っているか、第三者の目が入っているかなどが取引先等にも分かりやすいこともメリットと言えるでしょう。
各金融機関も企業のSDGs対応を支えるために様々な融資商品を用意しています。資金調達をお考えの場合は、まずは取引先の銀行に相談してみてはいかがでしょうか。
※ 環境省 グリーンボンドガイドライン グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。