BCP対策できていますか?策定のポイント

異常気象や大地震といった自然災害、新型コロナウイルスなどの感染症拡大、ウクライナ侵攻をはじめとする国際情勢の急変……。いつ起きるか分からない「もしも」は、事業の継続を左右しかねません。各方面でその備えは進んでおり、国は首都圏で大災害が発生した際のインフラ寸断のリスクを考え、データセンターの分散を図っています。コールセンター業界では、災害時のバックアップ機能を求めて遠隔地に拠点を移転する動きもあります。

緊急時の事業継続を助ける! 「BCP」とは

緊急時を想定して事業を可能な限り途切れさせないように策定するのが、BCP(事業継続計画)です。内閣府のガイドライン(※1)では、「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画」と定義されています。

またBCP策定は大掛かりになることが多く、企業によっては取り組みにくいと感じているようです。そのハードルを下げるため、中小企業庁では簡易版BCPとされる「事業継続力強化計画」(※2)の作成を推奨しています。

策定率は15%止まり…中小企業の関心と備えは?

BCPは東日本大震災や新型コロナで注目されものの、中小企業では浸透していないのが実情です。帝国データバンクの調査(※3)によると、2023年の大企業の策定率が 35.5%であったのに対し、中小企業は 15.3%。2016年からの上昇幅を見ると、大企業は 8.0 ポイントですが、中小企業は 3.0 ポイントのみとなっています。

現状では、中小企業の関心と備えはどんなところにあるのでしょうか。

帝国データバンクの同調査によると、事業継続が困難になるとして中小企業が想定しているリスクは、「自然災害」「設備の故障」「感染症」などが上位に入りました。BCPについて策定意向がある中小企業においては、その内容は「従業員の安否確認手段の整備」「情報システムのバックアップ」「緊急時の指揮・命令系統の構築」などが多くなっています。また、中小企業は大企業と比べた場合、「調達先・ 仕入先の分散」などサプライチェーンに関連する備えの割合が高い傾向にありました。

策定の大前提は従業員の安全確保

もちろん、検討する内容は企業ごとに異なります。前述した内閣府のガイドラインなども参考に、経営者がリーダーシップを持って取り組むことが重要です。
まずは、比較的容易な「事業継続力強化計画」のステップをもとに内容を検討してみましょう。

①事業継続力強化の目的の検討

有事の際、自社の事業においてどうすれば経済社会的な影響を最小限にできるかという視点で目的を検討します。

②災害等のリスクの確認・認識

ハザードマップ等を活用し、自社の事業所がある地域の災害リスクを確認し、影響を想定します。

③初動対応の検討

災害等が発生した直後の初動対応について、事前にルールを決めておきましょう。例えば人命の安全確保のための避難経路の確認、非常時の緊急体制をどのように整えるか、被災状況の把握・共有方法などについてです。

④ヒト、モノ、カネ、情報への対応

②で検討した内容を踏まえ、対策を事前に検討します。

⑤平時の推進体制

いざという時のために、平時から訓練などを行いましょう。

上記5つの中でも、とりわけ「リスク」はできる限り具体的に想定することが大切です。それにより広範な影響を整理しやすくなり、実効性のある対応策を策定できます。従業員の安全確保を大前提に、人員・拠点・物資・資金・情報をどう確保するか丁寧に検討しましょう。業務が停止することによる広範な影響をレベル分けし、優先順位をつけるという流れで考えることが重要です。次に、代替を含む業務・生産拠点のシミュレーション、調達先の多重化、重要情報のバックアップ、資金確保などを検討するという流れが望ましいでしょう。


詳しい検討方法などは、中小機構の「BCPはじめの一歩 事業継続力強化計画をつくろう!」のページを参考にしてください。

BCPを策定するメリットと支援メニュー

BCP策定に踏み出せていない企業の中には「人材がいない」などリソース面の課題の他、「必要性を感じない」という本音があるかもしれません。しかし、東日本大震災やコロナ禍を振り返ると分かるように、計画通りの生産ができなかったり、対応する人員が確保できなかったりという事態は明日にでも起きるかもしれません。

備えがなければ影響が及ぶ範囲は広がる一方で、企業存続まで危ぶまれる可能性も。サプライチェーンが高度化・複雑化した現代では、事業や企業の大小を問わず、平時からの検討が求められます。

また自社の事業継続力強化計画が防災・減災につながるとして経済産業大臣から認定されれば、設備に対する税制措置、低利融資、補助金の優先採択などを受けられます。本来の目的であるBCP策定に役立てましょう。


しっかり準備することで、取引先や社会からの評価が高まり、企業価値や競争力が向上するという効果も期待できます。計画策定を通して、経営層だけでなく従業員のリスク意識も醸成できれば、当事者意識や自主性まで高まるかもしれません。不確実性が高まる今こそ、危機を乗り越えられる強い組織をつくりませんか?

(※1)内閣府「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」(2023年3月)
(※2)中小企業庁 事業継続力強化計画
(※3)帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023 年」(2023年6月26日発表)

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年3月15日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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