産官学が集う慶應義塾大学「xSDG・ラボ」6年間の軌跡

佐久間 信哉(サクマ シンヤ)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授
長年、神奈川県で、さまざまな先進的な政策創りに関わり、ヘルスケア・ニューフロンティア推進局長や保健福祉局長等を経て2017年に早期退職。現在、慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボメンバーとして複数の研究活動に携わる傍ら、鎌倉市行政委員、湘南鎌倉医療大学評議員、医療法人や民間企業等の理事やアドバイザーを務める。
近著に、「SDGsの課題別推進方法」(蟹江憲史、佐久間信哉、高木超、2021.10第一法規)


2018年に、SDGs研究の第一人者である蟹江憲史・慶應義塾大学教授らがスタートした「xSDG・ラボ」と「xSDGコンソーシアム」。大学での研究のみにとどまらず企業や自治体などのパートナー、さらにはオブザーバーとして中央官庁も参加するなど、産官学が参画するユニークな枠組みで注目を集めてきました。同ラボに所属する慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の佐久間信哉 特任教授に、ラボの6年間とこれからの展望について、話を伺いました。

産官学が集うラボ

SDGsの特徴の一つは、自律分散協調による、あらゆる主体の取り組みとその組み合わせによるイノベーションにあります。企業活動や地方自治体などによる取り組み、消費や投資活動、IoTなど、世の中のいろいろな活動とSDGsを「掛け合わせる」ことで、真に持続的な成長を実現する可能性を秘めています。これを私たちは、「xSDG(エックスSDG)」と名付けました。慶應義塾大学SFC研究所の「xSDG・ラボ」では、多様で複雑な社会における問題解決をSDGsという切り口で実現するため、アカデミアの枠を超えたソリューション指向の研究を実施し、SDGsのベストプラクティスを創出・集積を進めています。

この「xSDG・ラボ」では、「xSDGコンソーシアム」と名付けた産官学が集う場を設けており、「VSP(ビジョン・シェアリング・パートナー)」といった名称で参加する企業や自治体を募っています。企業については、大企業でSDGsに取り組んでいる方々はもちろん、中小企業にもご参加いただいています。

やはり我々のようなアカデミアの人間だけというような、限られたメンバーでSDGsについて研究を進めるというのではなく、産官学がさまざまな課題についてしっかりと議論し合える場があるからこそ、意義のある成果につながっているのではと考えています。

分科会から共同研究が生まれる

年に3〜4回、全体会合である「コンソーシアム・ミーティング」でワークショップや意見交換をし、さらに深掘りをした方がいいテーマについては分科会、そして共同研究へとどんどん発展させていきます。こうして、アイデアをアクションへと進化させていくのです。

また、最近特にラボとして重視しているのが、中小企業の取り組みです。コンソーシアムのパートナーになるには年会費を頂戴していますから、中小企業の方々からすると敷居が高い面もあり、参加社数は決して多くはありません。しかし、我々としてはなんとかして、中小企業のSDGsの取り組みを加速させていきたいと考えています。

第一生命株式会社との共同研究を経て2023年7月には、「中小企業向けSDGsガイドライン」を公表しました。中小企業の目線に立ち、取り組みやすいように、さまざまな工夫を凝らしたガイドラインで、やはり分科会での議論や共同研究を経て完成したものです。さらに現在、中小企業の現実に寄り添った認証基準を作るべく、先進的な取り組みを行っている中小企業の経営者やさまざまな専門家の方たちのご協力を頂きながら共同研究を進めています。

中小企業の取り組むSDGsの現状

SDGsの認知度及び取り組み状況(全500社)

この調査結果からもわかるように、中小企業のSDGsへの認知度は着実に上がっています。私の実感としては、元から戦略的に取り組んでいる一部の企業はますますブラッシュアップされてきているし、そうでない企業にとっても大きな関心事になってきているのではないかと思います。

実際、我々のラボにも中小企業から問い合わせや、関係のある講演依頼が増えています。ただし、実際に取り組んでいる会社は少数でしょう。特に従業員数50人以下の規模の多くの中小企業にとっては、まだまだ縁遠い面もあるのだろうと思います。

SDGsについて知っているし、関心も持っているけれど、どう取り組んだらいいのかわからない。そうした中小企業には、ぜひ私たちの公表したガイドラインを手に取っていただきたいと思います。次の記事「中小企業向けガイドラインでSDGsについて学ぼう」では、ガイドラインについて少し詳しく説明します。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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